人の惑星 ⑨

 どうしてここの住人は、ここまで人間によく似ているのか。

 

 お昼時、仲良くなった科学者のひとりになんとなくそれについて訊ねてみたところ、返ってきた答えは意外なものだった。彼女はしばらくきょとんとしたあと、やおら怪訝そうに、「それってそんなに不思議なこと?」と答えたのだ。

 

「不思議ですよ」わたしは食い気味に返した。「わたしがこのような姿でいるのは、あくまで歴史的経緯の積み重ね、進化の気まぐれに過ぎないはずです。その気まぐれが百何十光年も離れたふたつの星でたまたま一致するなんて、そんなことあるわけがない」

 

「あるわけがない?」彼女はあからさまに眉間にしわを寄せる。「でも、現に、そうなってるじゃない」

 

「そうですけど」わたしは両手を広げ、そして正面でつなぎ合わせる。「あなたがたが、知的生物はみなこういう姿をしているものに決まっていると信じ込んでいる、というのは理解しています。でも、本当に思わないんですか? 話ができすぎていると」そして一拍おいて、「もしかして、そういう宗教の教えが?」

 

 彼女は思わず吹き出してしまう。「わたしは科学者よ。あなたの星、えっと……地球、でしたっけ? の科学者は、宗教と科学をごちゃまぜにするわけ?」

 

「……そういうのがいないわけではないですが」わたしは咳ばらいをして、その行為が百五十光年の彼方の星と同じ意味を持つことを期待しながら、話を戻す。「質問に答えてください。普通に考えて、不思議じゃないのか、って聞いてるんです。百五十光年の距離を隔てて互いに交流もないのに、同じ形の生物がまったく独立してほぼ同時に発生した、なんてこと」

 

「宇宙は広いのよ」彼女は言う。「そりゃ、そういうことだってあるでしょう。そもそも、べつにあなたが初めての来客というわけでもないんだし」

 

「たしかに全宇宙を探せばそんな星もあるかもしれないけど」できすぎた偶然であることに変わりはない、と言おうとして、わたしは引っかかりを覚えた。「え、いまなんて?」

 

「わたしたちによく似た宇宙人はあなたが最初ではない、って言ったのよ。それがそんなに意外だった?」

 

 意外に決まっている。そもそも、ほかの宇宙人が来たという時点でびっくりだ。「天穂」号の目的地は、ほかの地球発の宇宙船と同じ星にたどり着かないよう、限られた領域から選ばれている。すなわち、それは地球人ではない。

 

 となると、偶然はひとつではない。ふたつかみっつか、あるいはそれ以上。

 

 つまり。いくつもの別々の星で、同じ形をした生き物が、同時に発生しているということだ。