2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

非信仰告白

ありがとう、どこかの詐欺師さま。わたしなんかが、生きていける社会を作ってくださって。基礎研究が未来の役に立つと言い張ってだました投資家たちが、なんの役にも立たぬ研究に投資をしてくれる、そんな国を作ってくれて。これに投資しないと国が滅びると…

詐欺師に感謝

役に立たないことばかりやり続けているわたしたち理論研究者に、国家はなぜだか予算をつける。そんなことをしても何にもならないはずなのに、なぜだかそうする。なぜそんなことをするのかという非難の多くは往々にしてそれが社会に果たしている役割を知らな…

回収不能地点にて

ずっと家にこもってペンを動かし、キーボードを叩いてわたしは生活している。ゲームと睡眠と食事と、その他文明的に生きるために不可欠なものを除けば、やっているのは研究だけだ。それも、基礎研究。なんの役にも立たないことだけをして、わたしは生きてい…

素人タイムリミット

新しい環境に飛び込んで、聞いて知っていただけの景色の実物を見る。これまでの自分にとっては関係のない場所、世界の誰かがよく知らないなにかをやっている場所だったところが、その日から自分の持ち場になる。これまでと違う常識、違う風土に戸惑いながら…

素直になれ

たくさんのカメラが一点を凝視し、フラッシュライトがまばゆく降り注ぐ。満員の球場のお立ち台で、あるいは巨大な会見場で。観客が、記者が、テレビの向こうの無数の観衆が気にしているのは、ひとりのスポーツ選手。大きななにかを成し遂げた者の晴れがまし…

綺麗ごとの空間

満員の球場が興奮に揺れている。ついいましがた、九回裏の四番の打席。振りぬいたバットから放たれたボールはぐんぐんと伸びてゆき、バックスクリーンに突き刺さる。歓喜の輪に包まれる中でホームベースを踏む足また足を、スコアボードに刻まれるバツ印を、…

好き嫌い以外の価値

いったいわたしという人間は、なにをやりたいとおもうのだろう。なにをやっているときが楽しくて、なにをやっているときにつまらなく思うのだろう。遊びや研究や勉強やスポーツ、それらのうちのどういう要素が好きで、どういう要素が嫌いなんだろう。好きな…

人間のせい

南太平洋の海底に巨大な火山がある。死火山にも見えるそれはじつは活きていて、だいたい一千万年に一度、とてつもなく大きなエネルギーを放出する。といってもそれは海底深くにあるから、わたしたちの想像するような急激な噴火ではない。エネルギーは百年ほ…

これ以上どうやって体力が

若い頃にはあたりまえのようにできていたことが、歳を取るとできなくなるとは言われるけれど、いったいなにができなくなるのだろうか。そういうことを言うときひとはきっと若いときの無茶話を持ち出して、ほれ若い子はいいねぇだとか、こういうことができる…

単純作業

昔からわたしは単純作業が好きだ。頭をからっぽにしてただただ手を動かし続け、完成品の山が出来上がっていくのを眺めるのは爽快だ。自然と最適化されていく自分の動き、身体にしっくりと当てはまる動作をひたすらに繰り返しているときの気持ちは、もはや清…

すぐそこの先端で

何年か前のわたしは、研究の最先端とはきっとはるかなる高みなのだと思っていた。人類の知識の限界を押し広げるにはまず限界までたどり着かねばならず、したがって研究を始めるにあたっては、とてつもない量の勉強が必要だと信じ込んでいた。そしてその量の…

ログインボーナス

新しくなにかをはじめて、寝る間も惜しむほどにのめりこんだけれど、熱が冷めたらそれっきりということがある。そうかとおもえば、はじめたてのころは面白さがさっぱり分からなかったことが、意外と長続きしてしまうこともある。何事もやっているうちに面白…

正しい研究

ひとつの道をとことん極めて、道なき道を突き進んで、最初は想像さえしなかったほどの深奥へと到達する。来た道を振り返ればついてくるものもなく、自分の足跡がただ、誰にも踏まれることなくくっきりと残っている。前を見れば暗闇。その広大さは予想もつか…

クイズと教養

わたしはクイズの素人だ。素人というのはべつに謙遜して言っているわけではなく、とくにそのための練習をしていないという意味だ。わたしの実力については、レーティングのように明確な数値として出せる基準をクイズ界は(たぶん)持ち合わせていないから分…

教養力勝負

クイズ界がここ数年、盛り上がりを見せている。クイズを専門とするひとたちは、わたしが小学生のころはおそらく一介のオタクの集団に過ぎなかっただろうけれど、いまではユーチューブなどですっかり有名人だ。日本国内全体でもクイズは盛んになったのか、し…

昭和の映像

我が家のテレビではよく昭和の野球の映像が流れている。何十年も経っていまだに語り継がれるシーンなのだから、なかなかにドラマ性豊かで面白いものだ。時が経つにつれて次第に圧縮されていく時代、その濃密な一コマが、十秒ほどの間に詰め込まれている。 そ…

ログインボーナス

新しくなにかをはじめて、寝る間も惜しむほどにのめりこんだけれど、熱が冷めたらそれっきりということがある。そうかとおもえば、はじめたてのころは面白さがさっぱり分からなかったことが、意外と長続きしてしまうこともある。何事もやっているうちに面白…

憧憬

我が家のテレビではよく、昭和の野球の映像が流れている。画面は白黒だったりカラーだったりして、昭和という時代の中で技術が移り変わっていったことがよく分かる。わたしにとってはすべて生まれる前の話で、だからどうにも、昭和とは一様な、わずかに古ぼ…

朦朧

いいか小僧、俺を見ろ。まっすぐに見ろ。大人を舐めるんじゃねぇ。てめぇが知らねぇことを、聞いたこともねぇようなことをだぞ、俺はたくさん知ってんだ。すべての大人が知ってる。だから小僧、調子に乗るんじゃねぇ、舐めるんじゃねぇ。いいな。子供には分…

初期熱量

なにか新しいことをはじめて数日間は、とにかくそれにのめり込んで、そのほかのことはなにも手につかなくなる。仕事中はもちろんのこと、ご飯を食べていても風呂に入っていてもいつだってそのことで頭がいっぱいで、とにかく時間を見つけては新しい趣味に使…

科学的とはなにか

ひとはなにをもって、なにかを科学的だと判断するのか。そしてなにをもって、非科学的だと糾弾するのか。それらを分ける基準を、ひとはどこに置いているのだろうか。 科学そのものが基準ではないという話は昨日した通りだ。科学を基準にするとはすなわち論文…

血液型占い

血液型占いが非科学的だということは誰にでもわかる。現代に生きるおおらかで科学的な人間は、そう分かったうえで楽しんでいる。現代に生きるおおらかだか科学的ではない人間は、そう分かってはいないけれども楽しんでいる。そして科学的だがおおらかではな…

反抗の連鎖は続く

若者というのはいつの時代も、大人に刃向かいたくて仕方がないものだ。大人とは世の中を回している存在だから、つまり若者は世間という構造自体に反抗することになる。 わたしが歴史の授業で学んだ限りでは、近年で一番激しい反抗は六十年代、学生運動の頃だ…

証拠が必要ですか

現代社会は情報で溢れている。知りたいことをすぐに知るという点において、これほどまでに手軽な時代はかつてなかった。けれど同時に、調べて見つけた情報がはたして信頼するに足るかどうか……というのもまた、ずっと語られ続けている問題である。 この議論に…

釣り師への称賛

レスバトルに勝ちたければ、たいていいつでも方法はある。ほとんどのことは、それなりに正当化のしようがあるからだ。 それを実践している人間は実際にいる。どう見ても釣りに違いないアカウントを彼らは作って、いろいろと思い上がった発言をくりかえす。そ…

アンチ感情論

自分ではなにもせずに部屋にこもり、冷笑は美徳だとか言いながらこんな日記を書いて、世界を斬った気でいるわたしも別に、正義や情熱を理解しないわけではない。自己紹介の項目に「尊敬するひと」とあらばやおら語気を強め、別に誰かを尊敬せねばならぬとい…

季節の変わり目

急に寒くなりました。てことで、そろそろ風邪を引く予定です。 改めて実感することですが、季節ってもんは意外と早く終わるんですね。これから暑くなるぞと身構えて、冷房をガンガンに聞かせて部屋で待機しているといつの間にやら九月、十月。暑さをどうにか…

意図せぬ詭弁力

なにも書くことが思いつかない日でも、いざ書き始めてみると筆が乗って、いつの間にやら文章ができていることがある。昨日はそうだったし、だから今日もきっとうまくいくと期待していけない理由はない。というわけで、あとは本能の赴くままに書いていこうと…

余裕勢

忙しいとものを考えなくなるというのはなかなか本当のようだ。 しばらくの間締切に追われることが確定しているいま、わたしの頭の片隅には常に期限のことがあって、脳はなにかを深く考えようとはしない。締切が頭にあるからと言って作業をするのかと言われれ…

近未来風現代 ②

「奴は高速道路を西に向かってる」スマートフォンに向けて忍者はつぶやく。東京の地上は止むことのない騒音に包まれており、十数キロメートルの彼方にいる話し相手を除いて、誰にも聞かれる心配はない。かりにこのすべてが誰かに見られていたところで、特別…