三度目の感染

 またコロナにかかった。なんとびっくり、これで三回目である。

 

 ワクチンは三回打った。つまりわたしには五回分の免疫があり、それでも発症した。できることなら免疫系を構成する白血球なりなんなりをとっつかまえて、真面目に仕事しろ、と問い詰めたいところだが、そんなことはできないし、それが通用するならそもそもワクチンなんて必要にはならない。しかもたぶん今回は免疫はちゃんと働いており、だからこそ症状はちょっと声がおかしくなって微熱が出る程度で済んでいるわけなので、文句の言い先もない。

 

 それにしても三回目というのはなかなかである。ご想像の通りわたしはほとんど家から出ない生活をしているから、普通に考えて、外での感染可能性はだいぶ低い。わたしの何倍も外出をして何倍もひとと会っている人間は星の数ほどいるはずで、わたしが三回感染するのなら、かれらの喉は両手に収まりきらない回数、おかしくならないと計算が合わない。だが世の中はそうなっていない。理不尽とは思わないが、不思議なものである。

 

 べつに身体が弱いわけでもない。インフルエンザにかかったことは何度かあるが、一度を除いて入院には至らなかったし、その一回だって、軽度の肺炎を起こして数日間病院で寝そべっていただけだ。花粉症以外に持病はない。体育の授業はほとんど休まなかった。このようにわたしはいたって健康であり、病弱とは程遠い存在であり、したがって三度も発症するような人間ではない。最近はぜんぜん運動をしていないから、軟弱ではあるだろうけれど。

 

 二度だったか三度だったかは忘れたが、とにかく偶然はそんなにたくさん起こらないという。つまりこれはある種の必然というか、運命だとみなすことができる。コロナウイルスによく感染する星のもとに生まれ、全部軽傷で後腐れなく治るのがわたしの人生らしい。ウイルスと結ばれる運命なんてまっぴらごめんだが、それが宿命とあらば仕方がないし、それにちゃんと治るなら、わざわざ呪うほどのものでもない。

 

 二度あったことは三度あった。三度あることは四度あるだろう。わたしはどうせまたコロナにかかり、喉を痛めて、普通に耐えられる程度の苦しみにあえぐ。そして次第に慣れてきて、はいはいまた喉ね、と言ってしわがれた声で笑えるようになる(いまでも若干そうなりかけてはいる)。三度目の正直、そろそろわたしも、コロナマスターを名乗ってもいいころかもしれない。