焦燥

 諸々の締切まで実質的には一週間ほどになったが、やるべき作業はまだ残っている。締切前は基本的に暇だとこの前ここに書いた気がするが、あれはどうやら嘘なようだ。余裕をぶっこいて舐めたことを言って、仕事のできる人間のふりをしてすみませんでした。締切前はやっぱり忙しいです。ごめんなさい。

 

 っていう感じで謝って締切が伸びてくれればいいのだが、べつにそんなことはない。正確に言えば謝れば伸びる締切というものは世の中には存在するのだが、今回のはそうではない。というかそもそも、たとえ謝れば伸びる締切だったとしても謝る先はその締切を設定しただれかであって、ここで存在するかもわからない読者に非礼を詫びても、まったくなんの足しにもなりやしない。こんなくだらない文章を書いている暇があったら、間近に迫った締切に向けてなにか作業をするべきである。

 

 といってもまだ一応、わたしはこうして文章を書いている。それはわたしにとってこの日記がほかの何に代えても絶対に落とせない日課であるからなどではなく、単にまだ、そこまで忙しすぎはしないからだ。締切が近いと言っても残っている作業量がそれほど多いわけではなく、それなりに終わらせられるめどは立っている。ただ暇になるあてが外れた、というだけで。

 

 というわけでいまわたしは、おそらく人生で初めて、すこぶる健全な締切前を過ごしているのかもしれない。

 

 締切前は暇だから、とか言って予定を入れなくてよかった。具体的になにかが入りそうだったわけではないが、とにかく入れなくてよかった。逆に締切前は忙しいからと言って、予定を断らなくてよかった。考えれば考えるほど自然に健全だから、つまり今回、わたしは類稀なる計画性を見せたことになる。

 

 ……つまらない。書いていて面倒になってきた。なにかがうまく行った話はつまらないし、そのことが著者の主観ではなく客観的な事実であればさらにつまらないし、その事実を著者が素朴に肯定して悩まずにいたのなら、輪をかけてつまらない。おまけにその話がいっさいの具体性を欠いていればなおさら面白くない。この日記はそのすべてを満たしている。

 

 とはいえ、それでも致し方ないと思っている自分もいる。この文章は間違いなくつまらないが、つまらない文章を書くことを許容してしまうくらいには、いまのわたしは忙しい。面白くする工夫をしようと考えないくらいには、精神的余裕は残っていない。

 

 つまりいまは締切前であり、それはおそらく、わたし以外のほぼ全員が一度は感じたことのある焦燥である。