ほそながくておもしろいいろいろなもの

面白い形状というものが世の中にはある。見れば思わず、くすりと笑ってしまうようなやつだ。

 

例えば、生き物。陸上の生き物では、例えばヘビは面白いかたちをしている。電源コードのように地を這っているヘビには、笑ってしまうほどに奇妙な冷たさが宿っている。それだけでも面白いのに、とぐろまで巻くというんだからたまったもんじゃない。笑いの塊……いや、ひも。神秘が潜んでいるのはどんな生物も同じかもしれないが、ヘビの場合、神秘は笑いとリンクしている。

 

海に目を向ければ、生き物はもっとおかしな形をしている。例えば、エビ。触覚がやたら長くて、引っ張って遊びたくなる。カニ。ハサミがまず目につくが、脚だって負けず劣らず奇妙だ……細すぎるだろ。タコ。そしてウニ、イソギンチャク。メジャーな生き物ですらこんな有様なんだから、深海生物となればもう……言うまでもない。

 

生き物以外に目を向けても、面白い形のものはある。例えば、サスマタ。消防署の地図記号にもなっている、現代では天井に引っかかったボールを取るために使われるアレだ。ゼムクリップ。歯ブラシ。佐田岬半島。立科市。トイレの詰まりを取るための、黒い半球のついた棒。

 

……そして面白いのは、形状の面白さが、おそらく人類共通の感覚だろうことだ。

 

イワシとエビではどちらが面白いか。十人に聞けば、八人はエビと答えるだろう。残ったうちのひとりはエビアレルギーで、あとのひとりはイワシの専門家か、あるいはただの天邪鬼だ。

 

ネコジャラシ。雑草という名前しか持たない草たちのなかで、なぜだかネコジャラシの名だけは、われわれみな知っている。ネコは先端の感覚が好きらしいが、人間はそうではない。摘んでくすぐると嫌がられる。にもかかわらず、みながその名を知っているのは、形が面白いからだ。断じて、みなが猫だからではない。

 

いま挙げた面白い形には共通点がある。それはすべて、細長いことだ。細長いものは面白い。どこかしら不自然で、収まりの悪いものを感じる。エビの触角。耳かき。わき毛。面白いものがすべて細長い……とは限らないが、面白くないものはたいてい丸っこい。面白さと細長さはイコールではない、だが無視できない相関がある。

 

地図を見れば、ひとは砂嘴を探す。砂嘴は細長くて、面白いからだ。そんなものが出来上がる原理はどうでもいい。河川の運んでくる土砂だとか、そういう衒学は無粋だ。科学の知識になど頼らなくても、細長いだけで面白いのだ。細長いことをおいてほかに、砂嘴を面白くする理由はない。

 

細長いもの。可笑しなもの。自然にそうなるとは、到底思えないもの。人工的にそう作るには、相当の開き直りが必要に思えるもの。細長さとは神秘の結晶だ。普通に作れば、ものは丸くなるに決まっているのだから。

 

この文章は細長くない。だが一段落にはそれなりの文字数があるから、適切なエディタで読めば、面白くなるかもしれない。ぜひこの文章を、折り返し機能のないエディタに貼り付けて読んでいただきたい。

 

……え? 読みにくいって? そんなぁ……。