「ボブか?」 ステファンは叫び、あたりを見回した。「どこだ? どこにいる?」
「こっちだ、ステファン!」 ボブの声、きわめて明確な指示。だが空洞による幾重ものこだまと、あまりに複雑に絡み合う経路の影響で、その方向まではわからなかった。
「誰って?」 ステファンの耳元で、キャサリンが驚いたようにささやいた。「こんなところに知り合いが?」
きみたちが閉じ込めたんだよ、ステファンはそうあきれて言おうとしたが、彼女が二人の関係を知らないことに気づいた。ステファンは手短に言った。「そうか、知らなかったのか。同じ部屋に閉じ込められてた奴だ。仕事上の縁でね」
キャサリンは事実に気づき、顔をしかめた。それは自らを責めるべき理由が、またひとつ見つかってしまったときの顔だった。キャサリンはかろうじて言った。「あの……こう言っていいのかは分からないけれど、よかった。彼が無事で。あなたの知人が」 まるでステファンの知人であることが、人間に意志の存在を認める証拠になるかのようだ――そうステファンは思ったが、口には出さなかった。
「待ってろ! 今行く!」 ボブの声、だがこの動く地面の上では、待つとは動くことを意味する。ステファンはキャサリンを立ち上がらせ、その場を離れないようにコンベアを逆向きに歩いた。話しているうちに回復したのか、二人の弱った身体にもそれはどうにか可能だった。
「大丈夫そうか?」 ステファンは言った。
「あなたこそ、大丈夫?」 キャサリンは返した。
ボブの声が大きくなった。正確な距離はわからないが、それでも、彼がすぐ近くにいるのは明らかだった。「ステファン、脱出はもうすぐだ! すべてを明るみに出すときだぜ!」
「どうやって、だ?」 すかさずステファンは返した。またこうして、互いを馬鹿にしあえることが嬉しかった。「道が分かるとでも……」 ステファンはそう言いかけ、ひとつの疑問に思い当たった。
「おい、そもそもなぜ、お前にだけ俺たちの位置が分かるんだ?」
無機質な寒気が金属質の空洞を覆った。コンベアの隙間になにかが挟まり、ガタガタと音を立てた。ボブの声色が変わった。「おい、ステファン、今なんて言った?」
「なぜお前には、俺たちがどこにいるかわかるのかと聞いているんだ。そもそも、音が響くせいで、俺は方向すら……」 ステファンは説明しようとした、そしてその声をボブの反響が遮った。
「違う、その前だ! 誰がそこにいる?」 ボブの声。
「は? どういうことだ?」 言い返すステファンの脇を、キャサリンが突いた。「わたしがいることを彼は知らないのよ」
「誰かがそこにいるのかと聞い……」 ボブは言いかけ、そしてその声は途切れた。
しばらくの沈黙。そして、ボブがきわめて歯切れ悪く、その沈黙をひっかいた。「なんでもねぇ、ステファン。気にするな」