カンニバル食堂 41

キャサリンは沈んだ声で、ゆっくりと続けた。「ここの人たちは……残酷。とっても、残酷。彼らはまるで、人権というものを気にしないの。

 

彼らにとって、わたしたちは肉人と同じ。意志があるかどうか、それをわたしは大切だと思うけれど、彼らはそうじゃない。彼らにとっては、肉人もわたしもあなたも、単なる、ホモ・サピエンスの一個体にすぎない。

 

だから彼らには容赦がない。ううん、容赦しようという発想がないの。だって、肉人を肉にするとき、容赦していては始まらないもの。

 

……もしかしたら、肉人よりもずっと悪いかもしれないわね。なぜならわたしたちは敵で、肉人は敵でも味方でもないのだから。

 

とにかく、いったんだれかを敵とみなせば、彼らはいっさい躊躇しないわ。その態度は……そうね、ある意味では合理的と言ってもいいのかもしれないわね。彼らはこう考えるの。『もしそのだれかが本当は敵じゃなくても、それがどうして、その人を永遠に閉じ込めてしまわない理由になるのかしら?』

 

そして、いったん敵になってしまえば、赦しは永遠に訪れない。なぜなら、彼らは忘れてしまうから。意志のある誰かが、この建物のどこかに閉じ込めているという事実をね」

 

ステファンは返した。「それでも、きみはこれまでここで働いてきた」

 

キャサリンは溜息をついた。「そうよ。何度も疑問に思ったわ。わたしはこんなところにいていいのかって。彼らの無慈悲に加担していいのかって。

 

でも、わたしは我慢した。なぜなら、ここでの仕事は唯一無二だったから。

 

わたしはあなたたちの前にも、何人もの意志ある人間を監禁した。そのたびに心が痛んだ、でも……でも、仕事ってそういうものでしょう。あなたならわかってくれる……わよね?

 

せめてもの償いとして、わたしだけが彼らの記憶を持ち続けようと努力した。なぜって、ほかの誰もが、そのことを忘れてしまうから。それで償いになるとは思えなかったけれど、それでも、わたしにはそうする義務があると信じた。

 

でも、わたしは耐えきれなかった。昨日あなたを、ここのメンバーの友人を抹殺して」 キャサリンの唇が、あてのない怒りに震えた。

 

ステファンはせめてもの慰めを返した。「……それがアーロンのことなら、奴は気にしないだろうな。昔のままなら、奴はなにかを失わずにいることに興味はない」

 

「ううん、そういうことじゃないの」 キャサリンは自嘲気味に笑った。口元から悲哀がこぼれ、コンベアの鉄と油の隙間に消えた。「たしかに、彼は気にしないでしょう。ご友人を悪く言って申し訳ないけれど、彼はその……残酷な側の人間だから。そうじゃなくて、これは……わたしの個人的な問題なの。わたしの、弱さのね」

 

ステファンは言った。「きみはみずからの信念に従ったまでだ。だから……」

 

そのとき、まるで世界とふたりの間にポータルを刻むかのように、哀しみと慰安のヴェールを切り裂くかのように、ひとつの声が轟いた。

 

聞きなれた、悪友の声。「おうステファン、真実はもう見つけたか?」