キャラクターの手動生成 ②

 キャラクターを作るという活動は、非常に自由なものである。そしてその自由は、あらゆるものが許容されてしまうがゆえに、じゅうぶんに扱い切れる気がしない自由である。

 

 すくなくとも、わたしには扱えない。そもそも、なにから始めればいいのか分からない。とりあえず手を動かそうとキャラクターの設定シートのようなものをつくり、性別・年齢・容姿・職業と言った事項を埋めようとしても、どう設定するのが適切なのかよく分からない。というのも、キャラクターの設定というものはどれもこれも似たような妥当性を持ってしまうせいで、決めきれないのである。

 

 決めきれないものを決めるのには、運に頼るのが一番いい。どう決めても妥当なのだから、運に任せても問題はない。ならばいっそこうしてしまえ、と鉛筆でも転がして、わたしはそれらの枠を埋めてみる。なるほどこうすれば、いい方法かどうかはさておき、とりあえず一歩は前進できるだろう。しかしまだ問題は山積みである。

 

 すくなくとも問題は、ただ事務的な設定を書いただけではキャラクターはぜんぜんキャラクターらしくなんてならない、という、だれにでも思い当たる話だけではないのである。

 

 ファンタジー作家はよく、「ある程度進めたらキャラクターが勝手に動き出した」とか、そういうふざけたことを言う。なるほどたしかに、そういうこともあるのかもしれない。それは認めよう。だがそこまで行くにはまず、なにも分からないキャラクターを気合で動かしていくというプロセスが必要である。そしてたいていの設定は、その段階で破綻する。

 

 破綻したならば設定を直さなければならない。もとの設定のなにが悪かったのかを考え、軌道修正するのだ。妥当なトライアンドエラーである。そうすることはきっと、わたしにもできるだろう。問題が具体化されているなら、解決ははるかに簡単になる。

 

 けれどそれは、最初の設定がなんらかの意図に基づいて決められている場合にのみ、成立する話である。

 

 鉛筆を転がして出た結果を反省するのは難しい。反省するとしてやることは、もう一度鉛筆を転がしなおすことしかない。トライアンドエラーという機構には、トライによって得られた問題点をフィードバックする先が必要だ。そして鉛筆にそれはない。

 

 つまりわたしは、最初の段階できっと、なにかを決めておくべきなのだ。そのキャラクターの核となるようななにかを。

 

 そして今回の出発点は、鳥居をくぐらずに神社に入ることが許せないという、奇妙なこだわりであった。