鳥居 ①

 鳥居をくぐらずに神社に入ることがある。

 

 くぐることもある。というか、たいていの場合はくぐる。神社というものは普通、入口に鳥居を設けているものであり、普通に入口から訪問するなら、ちょうど一回鳥居をくぐる。

 

 入口以外から入るなら鳥居は通らない。神社と鳥居はセットだが、べつに神社のすべての外周がぐるりと鳥居に取り囲まれているというわけではない。そういう神社があったら面白いし、きっとインスタ映えするパワースポットとして絶賛観光開発中であるはずだが、そんな話は聞いたことがない。観光開発したはいいもののそれ以外の観光資源がないからよくわからないゲテモノアイスクリームなどを作って観光客にすらシラけた目で見られている、なんて話も、やっぱり聞いたことがない。

 

 入口以外から入っても鳥居をくぐる場合がある。正規の入口以外に鳥居を置いてはいけませんという決まりはないからだ。実際、とくに大きな神社では、入口以外に鳥居があることがある。わたしの気づいている限りでは鳥居の場所に明確な法則はないが、なにかとなにかの境目とか、なんだか霊験あらたかそうないい感じの場所にはよく鳥居がある。あとこれはほとんど悪ふざけの部類だと思うのだが、境内の道に鳥居を並べまくって花道のようにして、インスタ映えするパワースポットを作り出している神社もある。外周を囲うのと違って、こちらの企みは成功している。

 

 けれどときに、参道とも表参道とも言われる正規の入口から入っているのにもかかわらず、鳥居をくぐらないことがある。

 

 鳥居がないわけではない。わたしの理解では、鳥居のない神社というものは存在しない。鳥居の奥にあるもののすべてが神社なわけではないだろうが、鳥居がなければそれは神社ではない。だから神社の地図記号は鳥居の形になっている。

 

 鳥居がある場所が入口ではないというわけでもない。似たような話を繰り返すが、わたしの理解では、入口に鳥居のない神社というものは存在しない。入口以外にもあることはあるが、その場合は入口にもかならずある。鳥居がひとつしかなければ、それは入口にある。

 

 ではどうして、鳥居をくぐらずに神社に入るなどということができるだろうか。屁理屈好きの読者を黙らせるために念のため言っておくが、ヘリコプターかなにかで鳥居を飛び越えて直接境内に降り立つ、ということを言っているのではない。

 

 だがその屁理屈は、どうせ真面目に考えられたものではないだろうが、意外といい線を行っている。すくなくとも、鳥居がないとか変な位置にあるとかよりは、だいぶんましである。