絶食

 アメリカに来て三日目である。

 

 生活リズムはいまだにまともにならない。昼過ぎに眠くなり、部屋に帰ってきたらベッドに入って爆睡し、深夜に一度起きる。起きてネットサーフィンをしたり日記を書いたりして、さらに夜が更けてきたら再びベッドに入り、またまた爆睡する。ここ三日、だいたいそんな感じである。どうせ五泊しかしないのだから、いまさら現地に合わせるより、もういっそこのままやり通してしまったほうがいいような気も、だんだんしてきた。

 

 夕食は諦めている。健康のためにはもちろん食べたほうがいいのだが、この国の食べ物を食べるのが健康のためになるのかは定かではない。もちろんそれは負け惜しみで、実際には、帰ったら疲れて寝てしまうから夕食の時間に起きていない、というのが正しい。とはいえこの国の食事にはたして、眠いのを押してわざわざ起きていようと思わせるだけの訴求力があるかというと、まったく疑わしい。わざわざ起きて、腹ごなしのためだけのただのファストフードに三千円を払うという許しがたい経験をさせられるのであれば、空腹に耐えてでも黙って寝ていたほうがいい。

 

 やはりこの国で過ごすのは難しい。留学とか考えてないの、という質問をいつも、留学するなら飯の美味いところがいいですね、と答えてやり過ごしてきたわたしだが、これはやはり、あながち方便というわけでもなかった。

 

 人間は水だけでもかなり長い間生きていけるらしい。今回の滞在は一週間足らずだから、食べるものがなくてもどうにかはなる。食べたくないものを無理して食べる必要はないし、食べたくない時間にわざわざ食べに行く必要もない。天候不良や戦争がない限りあと三日くらいで日本に帰れるから、それまで耐え続ければいい。

 

 だがもしこれが留学など、長期の滞在だったと考えると、さすがに無理だな、という気持ちになってくる。安くてうまい夢のような店をどうにか探してそこに行き続けられればいいが、車がなければ生きて行けなさそうな田舎町なので、それすら望むべくもない。

 

 カップラーメンは半分消費した。あと二個しかない。これらはそれなりに美味しいが、やはりカップラーメンでしかないので、ラーメンを欠かさず大盛りにするわたしにとっては多少、量が心もとない。

 

 今度日本で行くかもしれない学会について調べてしまった。そこには海鮮市場があり、観光客向けに海鮮丼を売っている。会場とそことの距離を知るために地図を開いただけで、なんだか恋しい気分になってくる。