国当て

 最近、Geoguessr というゲームを始めた。知らないひとのためにざっくりと説明すると、ストリートビュー上で世界中のランダムな地点に落とされるから、周りの景色の情報を駆使してその場所を特定しなさい、というゲームである。

 

 もともと地理は好きなほうだし、とくに街中の言語を眺めるのが好きので、前々から気にはなっていたゲームではあった。課金が必要なこともあって、これまでなかなか手を出さずにいたのだが、最近謎に一念発起して、やってみることにしたのである。

 

 もちろん無対策ではなにもできない。専門の知識が足りなすぎる。わたしはそれなりに海外に行くほうで、年に数回はどこかに飛んでいるが、そんな経験だけで上手くいくようなものではない。もちろん海外経験が足しになることはある――一度など、観光で訪れたことのある場所がそのまま出題されて、これはあそこじゃないか、と分かったことすらある――けれど、ほとんどは行ったことのない国の、見たこともない風景が出題される。見たことのない場所を特定せよと、これはそういうゲームである。

 

 じゃあどうするのか。もちろん、各地域の特徴を覚えるだけだ。世界のなかにはさまざまな違いがあり、たとえば言語、ナンバープレート、電柱、土の色などが、地域を見分けるための手がかりになる。それを知識として獲得し、実際の景色から発見する。また全体的な雰囲気――なんとなく寒そうな感じのする植生――なんかも、よく役に立つようだ。

 

 このゲームはある程度、一般教養で太刀打ちできる。たとえば旅番組を見ていれば、その地域の典型的な風景というか、そういうものが自然と分かるようになっているだろう。あるいは言語マニアならどこの国でどの言語がどれくらい使われているのか知っているだろうし、未知の文字列を見て、それがどの言語なのかあたりをつけられるだろう。住んだことのある場所の標識はきっと自然に覚えているだろう。

 

 だがそれらにはやはり限界がある。いったいだれが、住んだこともない国の電柱の違いを知っているだろうか? 行ったことがあるとして、だれが標識の裏側に着目し、覚えているだろうか?

 

 というわけで。プレイヤーはすぐに、このゲームをプレイするひとしか知らないであろうことを暗記し始めることになる。それはまごうことなき丸暗記であり、覚えるべきことの量の膨大さをさておけば、簡単な作業ではある。これがメキシコの電柱です、覚えましたね、それだけ。

 

 にもかかわらずはたから見れば、電柱を見て国を当てるなんて、なかなかすごいことをしているように見えるわけである。