アホの反省

 二人目のヒロインを設計してみた。ミステリアスに見せようとした結果、書いているわたしにもさっぱり内面が分からないキャラクターを生み出してしまった前回の反省を生かして、今回はなるべく、ひととなりのわかる存在を目指した。外から見てひととなりがわかるようにするためには、その人物のことばや仕草で語らせるのが一番だと思い、思ったことが全部口や表情に出てしまうキャラクターを描いてみることにした。

 

 そういうキャラクターは必然的におしゃべりになる。したがって、ほとんど必然的に、明るくなる。暗くすることはできないわけではないが、そういう人物は心を開いた相手にしか饒舌にならないものなので、わたしが試したい表現を試せるようになるまでに大量の文章を書かなければならず、そんな面倒なことはしたくない。というわけで、明るくて素直な、裏表のないいい子を書くことに決まった。

 

 そして彼女になった。どうなったかはここ四日ぶんの日記を読んでもらえればわかることだが、一言で言えば、アホの子である。

 

 当初の予定では、こんなにアホにする予定はなかった。なにを言っているんだ、やつは初回から年甲斐もなく泥団子を作って持ってくるじゃないか、と言われればその通りなのだが、とにかく構想段階ではそうではなかったのだ。彼女はあくまで素直な子であって、アホでも変人でもないはずだった。少し抜けているところはあってもいいが、ここまでにはしないつもりだった。そうなってしまったものはなってしまったのだから仕方がないが、次に似たようなことをするなら、もう少し常識的な人間を描いてみたいものである。

 

 では、当初の目的の達成状況を評価することにしよう。

 

 彼女はミステリアスではない。つまり、外部にいる書き手の理想を押し付けた結果として整合性のある内面が行方不明になった、得体の知れない偶像にはなっていない。内面はむしろ単純そのものであり、ありていに言えば、彼女はなにも考えていない。

 

 だからと言って、わたしが彼女の内面を理解しているかといえば、おそらくそうではない。というのも、彼女はほんとうになにも考えていないからだ。外部から見ての魅力だけを考えてキャラクターを作ることになんの他者理解もいらないのと同じように、なにも考えていないキャラクターを作るために、わたしが考えるべきことはなにもないのだ。

 

 ならばわたしはどうすればいいのか。

 

 今思いついた方法がある。これまでわたしは、ヒロインを他者だと仮定していた。主人公に近い場所で物語を動かす、魅力的な存在。だがヒロインとは必ずしもそうある必要はない。わたしがやるべきはきっと、自分とは異なる主人公としてのヒロインを、一人称で描くことなのだ。