書くことがなにも思いつかないから、昨日は思いつかないことについて書いたのだった。その手は二度と使いたくはなかったものだが、思いつかないものは致し方ない。禁じ手に手を染め直さねばならなかったこと、残念に思う。誰に対してかは知らないが、とにかく申し訳ない。

 

今日は最初に言っておくべきことがある。このさい、はっきりさせておこう。昨日のように、後半まで真相を引き延ばしたりはしない。それはひじょうに言いにくいことなのだが……つまるところ、その……。

 

あっ、その、反省していないというわけではなくてでしてね。まずははっきりさせておいた方が、お互いのためになるといいますか、その……。とにかく、話を始める前に、こういうことは共有しておくべきことでして……。あっ、違うんです。信じてください。開き直っているわけでは、断じてございません。

 

えっ? 露骨に尺を稼ぐな、って? そんなつもりは……。ただわたしは、円滑な議論の進行のためにですね……。悪気はありま……いえ、すみません。すべてわたくしが悪うございます。えっ、違う? 怒らないから言ってみろ、って? それは怒る人のセリフですよね? それくらいはわかりますよ?

 

いいから早くしろ? すみません。言う通りにいたします。

 

まあ、その……。先ほど申しました通り、これはひじょうに言いにくいことでして、あの……。あなたもすでに、おおかたの察しはついていることとお思いですが……あの、はい、その手の話でございまして……。非常に心苦しいのですが、はい……。

 

勿体ぶるなって? いえ、違うんです。その、もしすでにお気づきのことでしたら、わざわざここで口に出して、お互いの時間を無駄にするのもまた忍びないかなと思いまして……ですから、聞く必要がないと思われるのでしたら、ぜひそう言っていただければ、わたくし心置きなく本題に入らせていただけるわけでして……

 

あ、あの、その……。

 

分かりました。言いましょう。

 

反省したからといって、内容が浮かんでくるわけではない! それとこれとでは、話が違うのである!

 

というわけだ。我ながら、ひどい有様だ。信頼が崩れる音が聞こえてくる。

 

思い返せば、ここまで開き直ったのは初めてだ。またあたらしい文章技術を手に入れた、と言えば聞こえはいいが、そんなごまかしは通用しない。この文章はまぎれもないゴミであって、ゴミを生産する技術など、あっても何の足しにもならない。

 

まあ、謝罪に理屈は必要ない。言い訳はしない方がいいだろう。はい。何も思いつきませんでした。すみませんでした。