新地球 ➄

 ぼくたちは基本的に、宇宙人が嫌いだ。ぼくらはみな地球人の末裔であり、そして地球という星は、ハイエスト・ウェイを延伸しようとしたどこかの宇宙人がその経路を決めるさい、近隣の文明の都合にこれっぽっちも配慮しなかったことによって滅亡したのだ。

 

 そう知っているから、ぼくらは宇宙人と聞くと残酷な合理主義者を思い浮かべる。自分の国の利益のためなら意識ある他者がどれほど苦しんでも構わないと考えている、人でなしの政治家。宇宙にはおよそ想像しうるかぎりのあらゆる生命体がさまざまな文明を営んでいて、それらにはまったく共通点などないように見えるけれども、唯一共通の傾向が見られるとするならそれは、多かれ少なかれ自分の利得を追及するという点だ。

 

 そんな冷酷さを知らずに無邪気に宇宙人を歓迎しようとしていたころの地球人も、どうやら心のうちでは同じように考えていたようだ。歴史書によれば、かれらの残した創作物には、なんらかの利己的な目的を持つ宇宙人がたくさん登場する。もっとも、かれらの考えていた宇宙人のほとんどは、現実の宇宙人よりはまだマシなようだ。というのも、やつらはことばが通じなかったり、地球を侵略して人類を滅ぼそうとしたりはするが、けっして地球そのものを消滅させようとはしないのだから。

 

 とはいえ、ぼくたちはほかの星の住人と完全に関係を断っているわけではない。新地球にはハイエスト・ウェイこそつながっていないものの、ぼくたち人類は周辺のいくつかの惑星と、古典的な宇宙船を用いて貿易をしている。それらの星のほとんどはハイエスト・ウェイに敵意をもっておらず、そのいくつかは実際にハイエスト・ウェイを受け入れており、したがって新地球に入ってくる物品には、悲しいかな、ハイエスト・ウェイ経由で遠い星からやってきたものも含まれている。

 

 ぼくたちの貿易相手は意外なことに、それほど悪い宇宙人ではない。貿易という理由がなくなったときにやつらがどのような態度を取るのかはだれにも分からないが、とりあえずいまのところ、すこぶる友好的に接してきている。かれらの一部は新地球の貿易港に住み込んでいて、新地球人を喜ばせるパフォーマンスをするばかりではなく、ぼくたちの暮らしに馴染もうとすらしてくれる。ぼくたちはやつらを例外的に友好的な宇宙人として受け入れているが、それと同時に、やつらの好意的な態度が広い宇宙の中でのほんの例外にすぎないことを、いつも心に刻みつけている。