文章の速度

この日記をはじめてそろそろ二年が経つようだ。ごく初期を除いては毎日千字以上をノルマに書いているから、単純計算で少なくとも七十万字を書いたことになる。ストーリーもメッセージもないとはいえ、分量だけ見れば文庫本数冊分に値するから、すこしは自信を持っていいことには違いない。

 

こうも長いこと書き続けていると、否が応にも自分の文章の癖が分かってくる。正確に言えば、書いている途中の文章にいったいどういう問題が発生するか、ということだろうか。日課として書き続けている都合上、わたしは日々の執筆にそれほど向上心を差し向けているわけではないのだけれど、わざわざ書く以上やはりある程度は、自分の欠点に自覚的であろうとしているつもりだ。

 

気づいた欠点のひとつは、行間が広すぎるという問題だ。書いているときは気にならないのだが、あとから読んでみるとなんだか、書き急いでいるように感じる。話題があまりに頻繁に代わるせいで、ついていくのがしんどい。要するに、スピードが速すぎる。

 

とくに流し読みでは、さっぱり頭に入ってこない。前から順に読んでいくと、前の文の内容をまだ理解しきっていないのにもかかわらず次の文がまったく新しい情報を伝えてきて、混乱してしまう。

 

プロの書いた文章はそうではない。ニュースサイトや有名ブログの文章は、急いで読んでも勝手に内容が入ってくる。小説にはゆっくり読まないと分からないものもあるとはいえ、それはべつに行間が広すぎるからではない。たとえば古典文学の読みにくい文章を読んだとき、難しいな、と感じることはよくあるだろう。けれどけっして、もう少しゆっくり言ってくれ、とは思わない。ああいう文章が読みにくいのは行間を省くからではなく、単に書かれている内容が抽象的で難しいからなのだ。

 

そこにはいったい、どういう違いがあるのだろう。二年弱をわたしは書き続けてきたが、正体はまだ分からない。

 

これではだめだとわたしは思う。だから、いろいろと試行錯誤は続けている。

 

必要最低限の論理だけ書いて終わりにするのではなくあえて同じことを繰り返して冗長性を高めてみたり、具体例を提示してみたり。ただペースを落とすためだけに、こんなふうに文章構成上まったく必要のない文章をはさんでみることもある。こうやってあの手この手で減速させた文章は、それでもやっぱり速い。読んでいてしっくりくるペースとはどういうものなのか、わたしはいまだつかみ切れていない。

 

この道は、執筆者のだれもが通る道なのだろうか。それとも、わたしが文章を書くときの考え方になにか致命的な欠陥があるのだろうか。あるいは、わたしが速度だと思っているものは実は速度などではなく、まったく別の要因によるものなのだろうか。論理展開を改善すれば、劇的によくなるタイプの問題なのだろうか。

 

分からない。分からないから、わたしはこんな文章を書いた。公開し、客観性へと問いかけるために。わたしにはけっして気づかない改善策を、あなたが知っているかもしれないと信じて。

 

だから、教えて欲しい。わたしの文章は本当に速いのかを。そしてそれは、どうすれば改善する可能性があるのかを。