カンニバル食堂 50

まるで塹壕を移動するかのように、ふたりは這い進んだ。低すぎる天井のおかげで、それは困難を極めた。腕のひとかきで大きく進もうとステファンがすこしでも頭をもたげるたびに、彼の頭は天井を擦り、髪を埃にまみれさせた。その逆に、頭を低く保とうと試みるたびに、ステファンは今度は、床のゴミに接吻する羽目になった。

 

「ついてきてるか?」 うんざりするほどゆっくりな行進の合間に、ステファンは後ろに訊ねた。

 

「ええ、どうにか」 それでもその声はけなげに、ぴったりとステファンの足の向こうについてきていた。

 

「よかった」 ステファンは返した。

 

通路の埃の何割かを巻き取り、幾度もむせかえりながら、ステファンは進み続けた。

 

ステファンは先ほどの違和感について考えた。いつも必要なことを明確に語るキャサリンにしては珍しく、先ほどのことばは歯切れが悪かった。ステファンが、コンベアに殺されなかったことに対する安堵を口にした、あの時間は。

 

おそらくキャサリンは、なにかを隠しているのだろう。知られたくない何かを。

 

「キャサリン」 埃を食べないように、ステファンは用心しながら口を開いた。「ほんとうに偶然だったのか? ここにたどり着いたのは」

 

「……偶然よ」 キャサリンは言った。

 

「それにしては、この道は長いし、狭すぎる。偶然でこんなところに来るとは思えない」 とステファン。

 

「……」 キャサリンは黙り込んだ。

 

図星だ。おそらく、事実はこうだ。ステファンが気を失っているあいだに、キャサリンはステファンをこの場所に運び込んだ。おそらく、その方が安全だから。だが、そうだとして。

 

「……なぜそれを隠す必要がある?」 ステファンは言った。顎が床をこすり、埃が口に入った。

 

「言う必要がなかったからよ」 キャサリンは言った。「そう。あなたを運び込んだのはわたし。でも、わたしにはあなたのために、なんでもする義務があるから」

 

「それだけか?」 とステファン。「だとして、どうしてこんなところまで連れていく必要がある? そもそも、こんな距離をどうやって運んだんだ?」

 

そう、こんな距離を運べるはずがない。すべてがその事実を裏付けている。ここの狭さも、キャサリンの身体の痛みも、とてもコンベアの上とは思えないソリッドな床も。

 

つまり。

 

「……わたしたちが向かっているのは、あの機械の空間ではないんだな?」

 

ステファンは手を繰るのをやめ、暗がりの中、キャサリンの腕がステファンの足を叩いた。答えをもらうまで、進まないつもりだった。

 

ステファンは言った。「きみはわたしをどうするつもりだ? もしかして最初から、きみはわたしを捕まえに来たのか?」