カンニバル食堂 47

「わたしはボブの味方で、だからたぶん、アンナの味方だよ」 ステファンは言った。

 

ステファンの予想通り、アンナは納得しない様子だった。「でも、ステファンはそのひとのともだち」

 

ステファンはアンナの、そしてボブの認識を推察した。ふたりは、キャサリンが監禁されていたことを知らない。キャサリンがもはやこの工場の敵であることを知らない。ステファンとキャサリンのあいだの、新たな絆のことを知らない。

 

「いいの。わたしを置いて、三人で行って! わたしはどうなっても構わないから」 キャサリンは焦点の定まらない目で、それでも首をもたげてステファンを見つめた。そして咳込み、頭が地面を乱暴に叩いた。

 

「意識のある人間を無碍にはできないと言ったのはきみだろう」 ステファンは怒りを込めて言い返した。

 

ステファンは誤解を解きたかった。解いて、共通の目標のために戦いたかった。脱出と告発のために、この四人の誰もが、その人にしかできない役割を持っているからだ。

 

だが、ステファンを除けば、誰にも誤解を解く気はなかった。ボブはいかにしてか状況を早とちりして、キャサリンを抹殺しようと試みた。キャサリンは自責の念から、いかなる結果をも受け入れようとしている。そしてアンナは、敵の味方が必ずしも敵ではないかもしれないということを、理解できていない。

 

だからわたしが、やらねばならない。ステファンは決意した。

 

ステファンはまず簡単なところから手を付けようとした。いまのキャサリンなら、工場の被害者であるステファンの言うことをなんでも聞いてくれるだろう。その残酷な思い付きを、ステファン自身は快くは思わなかった。だが、それが早いのならそうするしかない。仕事とはそういうものだ。

 

「キャサリン、きみはわたしたちと来る必要がある。なぜなら、きみが一番、この工場について詳しいのだから」 ステファンは言った。

 

「だめよ。足手まといになるだけだわ」 キャサリンは言った。「この状況では歩けそうにない。そもそも、わたしには助かる資格なんてない」

 

「よくわかってるじゃねぇか」 ボブが口を挟んだ。「ステファン、はやく行くぞ。こいつが回復して、俺たちを追ってくる前に」

 

「待て、ボブ!」 ステファンは必死で言った。「話を聞いてくれ! 彼女はたしかに俺たちを閉じ込めた、だが今は味方なんだ!」

 

だがボブは止まらず、そのかわりに哀しげな笑みを浮かべた。「なるほど、お前たちはグルだったんだな」

 

「どうしてそうなる!」 ステファンは言った。「キャサリンも閉じ込められたんだよ! 裏切り者として!」 これでボブが考えを改めてくれると信じて。

 

だがボブの思い込みは、その程度では覆らなかった。ボブはひとことだけ言い捨てて去った。「周到な策略だな。いくぞ、アンナ。道はどっちだ?」

 

そしてふたりは遠ざかった。去り際に、ステファンはアンナの声を聞いた。「出口なら、こっち」