カンニバル食堂 44

「何を!」 キャサリンのうめき声に鈍い音が続き、ステファンは反射的に振り返った。少し前とまったく同じように、彼女はコンベアに倒れ伏していた。頭はコンベアの壁に打ち付けられ、壁と地面の隙間が彼女の金髪を引っ張った。

 

「大丈夫か!?」 ステファンは屈みこもうとして、だが視界の端にボブをとらえた。ボブはパイプを引き、上段に振りかぶっていた。そのすべてを、アンナが一切表情を変えることなく見つめていた。

 

ボブがパイプを振り下ろし、キャサリンの頭を狙った。ステファンはとっさに右手を振り上げ、パイプを防いだ。不気味な音がして、右腕に激痛が走った。

 

「何する気だ!」 ステファンは叫んだ。

 

「それは俺の台詞だ!」 ボブは叫んだ。「お前はそいつが誰だか覚えてないのか?」

 

「覚えてるとも!」 ステファンは叫んだ。そしてようやく、ボブの認識を理解した。ステファンはキャサリンが敵ではないと知っている、だがボブはそうではないのだ。「あ、えっ……とにかくおとなしくしてろ! 説明はするから」

 

「いや、聞きたくないね!」 ボブは叫び、みたびパイプを振り上げた。こうなったボブは、もはや手が付けられないことをステファンは知っていた。断片的な知識から、ボブが作り出した短絡的な物語。だがそれを誤りだと指摘すればするほど、彼は都合のいい屁理屈をさがし出し、彼の誤認はより強固になってしまう。

 

「わかった、聞かなくていい! とにかくそのパイプをおろせ!」 ステファンは叫んだが、ボブは聞かなかった。パイプが振り下ろされ、今度は地面を叩いた。ステファンはボブに組み付き、攻撃をやめさせようとした。

 

ボブはもがき、パイプが地面をたたいて鈍い音を立てた。ステファンはパイプを投げ捨てようとして、だが右腕の痛みに息を詰まらせた。その一瞬の静寂に、ステファンは背後に悲壮な声を聞いた。「……めて! もう、やめ……」

 

ステファンは振り向き、キャサリンはようやく声が届いたことを知った。「やめて、わたしを守らないで! わたしは……わたしは、ここで死ぬべきなの! 当然の報いなのよ!」

 

「ほら見ろ! そいつだって殺せと言ってるじゃないか!」 ボブが叫んだ。敵と思う人間のことばを根拠にした、もはや支離滅裂な論理。

 

だがその異常さに、ボブは気づいていないのだろう。だからステファンは別の手に出ることにした。「じゃあ、アンナはどうなんだ! 大切な子供に、こんなものを見せてもいいのか?」

 

だがボブは、待ってましたとばかりに言った。「あんたは何も分かってない! すべては、この子が望んだことなんだよ」