カンニバル食堂 36

キャサリンは、床のコンベアを抱え込んで泣き出した。長い髪が乱暴に散らばり、コンベアの隙間に挟まった。その髪は音を立てて抜け、だがキャサリンは構わなかった。

 

「わたしは! 繰り返した! 同じ過ちを!」 いまだ事情は分からなかった――なぜキャサリンが、工場に勤務することになったのか。そしてなぜ、裏切り者として閉じ込められたのか。

 

なぜそれは、ステファンやボブと同じ監獄用の部屋ではなく、肉人のいる部屋だったのか。

 

「こうなるってわかってた! わかってたのに!」 キャサリンは泣き喚いた。

 

一般論として、ステファンにしてやれることはなにもなかった。どんな言葉にも行動にも、致命的な選択の悔恨を和らげるに足る力はない。

 

皮肉なことに、いまのキャサリンを楽にさせる手段がひとつだけある。それは、疲労だ。虐待的な内省の末に、後悔すらも億劫になったとき、ひとは初めて悔しさを受け入れられる。

 

だから、いまはただ、彼女をそっとしておくべきだ。すくなくとも、最初の感情の迸りが覚めるまでのあいだは。

 

だが、状況がステファンにそうさせてくれなかった。コンベアの分かれ目が近づき、つぎの行先を選ばなければならなくなったのだ。おそるおそるキャサリンを見ると、その突っ伏した頭は、ちょうど壁にぶつけそうな軌道をたどっていた。

 

ステファンは不本意ながら、キャサリンの身体を持ち上げた。それは細く、それでいて驚くくらいに手に馴染んだ。涙と香水のごちゃ混ぜになったにおいが、それでもさわやかに鼻を突き抜けた。不気味なほどに、さわやかに。

 

キャサリンの狂乱の瞳がステファンの顔を覗いた、そして驚くべき力で彼の両手を振り切った。キャサリンは頭をぶつけ、だが構わなかった。「あなたが! なにもかも、あなたのせいなのよ! あなたが来なければ、こんなことにはならなかった!」

 

ステファンはすんでのところで、彼女の身体を支えた。

 

「すまない。わたしもまさか、あそこに君がいるとは思わなかった」 ステファンは答え、だがそれはキャサリンの意図したところではなかった。

 

「違うの!」 キャサリンは叫んだ。そしてはっとしたように、ステファンの屈んだ両膝に縋りついた。「あなたは、あなたは……来てよかったの。ううん、あなたは……どうして来てくれたの? どうして、わたしいる部屋がわかったの? どうして、わたしを助けてくれたの? どうして?」

 

ステファンは率直に答えた。「わたしはきみがいるなんて知らなかった。ただ、食べものにありつける部屋を探していただけだ」

 

「嘘よ!」 キャサリンは叫んだ。両目の涙が、訴えるように光った。「あなたは……あなたは、恩人なの。

 

だからお願い、言わないで。わたしを助けたのが、まったくの偶然だっただなんて。わたしの……わたしの無謀が救われたのが、単なる幸運のせいだなんて。

 

だってそうでしょう。わたしが受けるべきだった報いは、そんなくだらない理由で奪われたの?

 

わたしの人生の本質は、努力と実践だと思ってた。

でも違った。むしろ、失敗したのは実践のほうだったの!

わたしはただ、運がいいだけの女だったのよ!」