バグれ、我が身体

毎日律儀にわたしの脳内をひけらかしているだけのこの日記だが、たまにはわたしに起こったことを綴ってみても良いだろう。あまりになにもなくて忘れかけていたのだが、どうやらじつは、わたしにも生活があるらしい。

 

一昨日、久しぶりに電車で外出した。まえに外出したのは……いつだったかは覚えていないが、きっと郵便局か散髪に行ったときだろう。これはその、健康で文化的な最低限度の外出ってやつだ。じっさい、いくつかの事務手続きは毎年しないといけないし、髪は自分で切るとうしろがガタガタになって、二か月のあいだ後頭部を気にしつづける羽目になるから、おとなしく散髪屋に頼んだ方がよい。経験者の言葉は重い。

 

わたしは東京近郊の住民なので、もちろん移動手段は徒歩である。つまりわたしの行動半径は囚人レベルで、電車移動の非日常たるや、もはや宇宙旅行にすら等しいということになる。そんなわたしが、一昨日ははるばる電車にまで乗って外出した理由、それは、コロナワクチンの 2 回目を接種するためだ。

 

……あれ、まえに外出したのってもしかして、1 回目を接種したときじゃない? うん。そうかもしれない。

 

話題がそれた。さて、そんな接種優先度最低生活を送るわたしが、なぜわざわざスペースシャトル (※電車のことです) に乗ってまで、体調を悪化させる液体を注入されにいったのか。いろいろ複雑な理由はあるが、じぶんに素直になって考えれば、いちばんたいせつな理由が見えてくる。

 

その正体は、好奇心。

そう。わたしは、わたしの身体で人体実験がしたかったのだ。

 

ワクチンとはある意味、身体をバグらせるためのものだ。脅威ではないはずの液体を身体に脅威と誤認識させることで、ほんとうの脅威に備える。そしてそのバグの一端は、副反応というかたちであらわれてくる。

 

そして、バグは楽しいものだ。たとえばわたしが、新発売のアクションゲームをプレイしているとしよう。そのとき、もしとつぜん物理エンジンが荒ぶって、キャラクターの頭がもげて回転しながら飛んで行ったなら、たいていの場合、わたしはこれまでのストーリーなど忘れて、小学生のようにゲラゲラと笑い転げることだろう。

 

それとほとんど同じ理由で、わたしはワクチンが楽しみだった。感染予防とかそういう難しいことは、正直よくわからないけど、とりあえずわたしの身体は、感じたことのないバグり方をするだろうから。

 

さて、接種は一昨日だったから、もう副反応はほとんどおさまっている。実際にわたしの身にも、いろいろと不思議な副反応が起こった。その中身は……いや、書くのはよそう。面白かったことこそ、ネタバレはよくない。