矛盾三定理系 第一話

著者 殿、

 

あなたにこれをお伝えしなければならないことは大変心苦しいのですが、貴論文


『矛盾定理対を含まない矛盾三定理系』


は、国際分野際数学会議 (International Inter-area Mathematical Conference) に不採択の運びとなりました。


どうか落ち込まないでください、不採択の結果は、貴論文が良くないものであることを意味しません。非常に狭い採択枠のために、我々は何報もの優れた論文を不採択にする必要に迫られたのです。

 

査読者からのコメントは以下の通りです。

 

----- 査読者 1 -----
評価: +2 (採択)

 

この論文では、『クレーベの不動点定理』『アルバの一様定理』『ペトロフスカヤ -- ペトロフスキーの格子定理』の三つの定理が相矛盾することを証明している。一定の仮定のもとで、『不動点定理』と『一様定理』、『不動点定理』と『格子定理』はそれぞれ相矛盾しないことがすでに証明されている。著者らは、『一様定理』と『格子定理』が、同様の仮定のもとで矛盾しないことを証明することで、この三定理が、どの二定理も矛盾しないがすべてをあわせれば矛盾するような定理の組の例であることを示している。

 

筆者らは、三定理の矛盾をみちびくために、『不動点定理』と『一様定理』の両方をみとめた世界に関するシグリストらの結果を利用している。矛盾の証明はシグリストらの議論にふかく依存しており、その正当性を厳密にたしかめるだけの時間がわたしにはなかったが、とくに目立った間違いはないように思う。

 

『一様定理』と『格子定理』の無矛盾性の証明もまた、シグリストらの議論にもとづいている。シグリストらはおなじ論文で、『不動点定理』が『非歪』という性質をみたすと証明することによって、『不動点定理』と『一様定理』の無矛盾性を得ている。著者らは、『格子定理』が『非歪』に似た性質をみたすことを証明し、シグリストらと同様の流れで『一様定理』と『格子定理』の無矛盾性を得た。『非歪』性の証明は単純であり、問題なくただしいようにわたしは思う。

 

著者らは、三定理の矛盾が具体的にいつ問題を起こすのかについては触れていないが、かわりに、二つだけの定理の無矛盾性だけで数学的議論を正当化する風潮に警鐘を鳴らしている。近い未来には、いくつかの定理をあつめて初めて生じる矛盾を避けるために、数学をとてつもなく細かく分かたなければならない日が来ると、そう著者らは予測している。そんな混沌がほんとうに訪れるのかはわたしにはわからないが、この警告には、じっさいに一定の妥当性があると思う。

 

コメント:
- 『非歪』が『一様定理』との無矛盾性を意味するシグリストらの議論について、直感的な説明があれば教えて欲しい。