救国の桃太郎 第九話

みたび桃太郎の頭上が晴れ、足元を何かが走った。野生の素早さで猿が飛びつくと、それはくすんだ羽色の雉だった。

 

桃太郎は猿に命じ、雉を足元に放たせた。「お前はどうして、群れから離れて一羽でいるのだ」

 

「きれいな、きいろいおはながさいてたの。あのこにみせてあげたいけど、そういえば、ここはどこだろう?」雉の声には一切の恥じらいがなかった。

 

 

「バカな奴だな、へっ!」猿は嘲笑い、犬を囃し立てた。「おい、小汚い犬め、お前の死んだような身体ですら、取って食っちまえるようなのろまがいるぞ」

 

「たべる?」雉はわけがわかっていない様子だった。「おう、犬め、こいつを食わなきゃ、どうして生きていける?」猿はさらに煽ったが、犬は雉を見つめたまま動かなかった。

 

桃太郎は咳払いをした。「とにかく、道に迷ったのだな」雉は黙ってうなづいた。

 

「ならば、一緒に来るがよい。同行の証に、これをやろう」桃太郎は、雉が喉を詰まらせないよう、黍団子を細かくちぎって分け与えた。犬が無言で非難のまなざしを向け、猿がめざとくそれを見つけた。

 

「おう、この死に損ないの犬め、運のいい奴め!」猿はみたび煽り立てた。「お前の汚ねぇ耳にも聞こえたか? 食いモンがわざわざ歩いてついてくるんだとよ!」

 

こうして、桃太郎の行軍には、一羽の同行者が加わったのである。