思ったんだけどさ、読みにくくね?

いい文章ってのは、読みやすい文章だ。スッと入ってきてグッと心に響く、そういうのこそ価値ある文章ってもんだ。

 

で、俺の文章はどうだ。俺だって伊達に二か月も日記を書いてたわけじゃねぇからよ、そんなのは読まなくても分かる。正直言って、俺の文章は読みにくい。

 

普段からそんな文章ばっかり読んでるからは知らんが、俺はやたらと大上段に構えたがる。中身がともなってるならまだいい。やれ「良い文章とは何か」とか大袈裟にぶち上げておいて、結局ただのなよなよしい若者の悩みだったりするじゃねぇか。

 

俺だって努力はしてる、それは分かってるぜ。俺が書いてるんだから。文を縮めようと頑張ってるし、ムダに漢語を使わないようにもしてる。確かに、その努力は役に立ってるだろうよ。俺が何も気にせずに書いたらどうなるか、俺には分かるからな。

 

でも、俺は思うんだ。その努力、俺の文体に合ってなくね?

 

俺の文体はそもそも、小難しいことを書くためのものだ。そう意図してたのかは知らんがね。俺たちはいつも、嘘を書いて誰かに怒られないかびくびくしてる。だから、いくらでも予防線を張れなきゃなんねぇんだ。それでも怒られそうなときは、こっそり行間に何かを隠しちまうんだ。で、いつもの俺の文体は、それができる。

 

でもこの日記は、怒られる心配はねぇ。誰も読んでないからな。だから今日みたいな、まっすぐな文体で構わねぇんだ。それでもじゅうぶん、同じことが書けるはずだぜ? 悩みを話すと決めるのは大変でも、話すための言葉に苦労したことなんかないからな。

 

俺が言いたいのは、こういうことだ。書くことに見合った文体で書け。予防線のための文体で予防線を張らなかったら、ただ無意味に仰々しいだけだ。この日記は文章の練習でもあるんだから、それが一石二鳥ってもんだろう。