\begin{なんかカッコいい式}

論文を書くとき、イントロと証明にはひとつ大きな違いがある。ほんとうにくだらない違いだが、やる気を大きく左右する違いだ。

 

さてその違いとは、数式があるかどうかだ。そう、数式はカッコいいから、書くと盛り上がるのだ。

 

例えばテレビドラマは、天才の演出としてしばしば適当に数式を流す。視聴者が数式を読めるなどとは考えもせず、単純なカッコよさだけを求めて。私のようないわゆる理系は、ドラマの中の謎は数学では解けないと知っているから、出鱈目な記号の羅列に隙あらば文句をつけたくてうずうずしている。

 

 

だがそれでも、数式の絵画としてのカッコよさに、私は抗えない。自分の書いた、完全に意味の分かっている式にさえ、意味を忘れて私はうっとりしてしまう。証明の細部のいかにくだらない注釈であっても、さらには書きかけの間違った式であっても、やはり私を高揚させるには十分なのだ。

 

だから結局、組版ソフトウェアは偉大だということだ。数学的な本質ではなくとも、私をいい気にさせるのなら、それは本質と等しく素晴らしいものだ。