思考分布の収束先

無意識を駆け巡る思考は有用だが、頭は狙った通りには廻らない。

 

多くの場合、無意識の頭を支配するのは、直前に気になっていたことだ。寝る前の数学の問題は、布団に入っても頭を占め続ける。新しいデッキの 60 枚が、四六時中頭を離れないこともある。

 

そして、その思考はコントロールできない。学会発表を聞くべき頭が、小説世界の妄想にとらわれ続けることもあるのだ。

 

だから、完全に放っておいたテーマが、無意識下で少しずつ進んだりはしない。論文を書いているなら、論文についての思考は進むが、小説のアイデアがふと浮かんだりはしない。ログインしないゲームは勝手に進まないように、無意識のランダムネスには期待できないのだ。

 

だが、すごく長い期間ならどうだろうか? 局所的な決定性が無視できるほどの時間なら?

 

頭の片隅に置いた思考には、いつか順番が回ってくるはずだ。ひとつのことに集中できる期間をはるかに超えた時の向こうに、新しい私はたぶん、いる。人生が終わる前に叶うかはさておき、願い続けるのは悪くない賭けなはずだ。