キャラクターとエピソードの輪廻

短い言葉は、多くの内容を語らない。情報量的な問題で、複雑な何かを伝えるには長文が必要になる。

 

 

例えばキャラクターの設定は、複雑なもののひとつだ。キャラクターはそれぞれ固有のものでなければならない。そして、個性を感じられるほどに詳しく人間を描写するには、いくつかのエピソードが必要になる。ましてや、その変化を書くとあっては!

 

 

逆に、エピソードにもまた、キャラクターの設定が必要だ。設定のないキャラクターは動かない。だから事前に、作者はキャラクターの特徴を書く――エピソードなしで、すなわち、短い言葉で。

 

短い言葉の箇条書きは、もちろんキャラクターそのものではない。性格診断の類型を見ても、その人を理解したことにはならないのと同じだ。だから最初のエピソードにおいては、短い設定だけで無理やりキャラクターを動かさねばならない――まだひとりでには、動き出さないから。

 

キャラクターが先か、エピソードが先か。鶏が先か、卵が先か。どちらかを先に作ることはできない、だがどちらも作らなければならない。だからと言って、別にキャラクター設定が特別難しいことだとは思わない。仕事も研究も、運動もゲームも、最初はおなじような矛盾に苦しむことになる。鶏と卵、両方を順繰りに型取っていく作業の先に、循環する生命の体系が宿ると期待している。