2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

厳密性の衰退

チャット AI たちがこのまますくすくと育って、この世のたくさんの職業を置き換えたのなら、どんなことが起こるだろう。役所の受付やコールセンター、カウンセリングに内科検診、保険や宗教の勧誘その他、人間と会話することが職務内容であるありとあらゆる…

複製可能、削除可能

わたしに物心がついたころはまだ、AI の将棋の実力は人類に遠く及ばなかった。にもかかわらず、わたし個人は一度も、AI より将棋が強かったためしがない。 AI が人類を超えるとはどういうことだろう。将棋という一点において、わたしは人類に勝てていない AI…

描写の多寡

詳細とはどれくらい描写すべきものなのだろう。ものごとの本筋に直接は関係しないけれどもその説得力に奥行きを与えてくれるような、細かい情景やエピソードを、文章はどれくらい明示すべきなのだろう。 場合による、というのがもちろん答えだ。世の中のほと…

without understanding

自分のやっていることの原理を、すべて理解しておきたいというこの気持ちは、きっとわたしたち数学の徒に特有の価値観なのだろう。世の中には、理解なしに回っていることがいくらでもあるし、そういうものに従事するひとが、自分がやっていることを本当の意…

原理などない、と言いたい

読ませなくていいことは書かなくていい。書かなくていいことは設定しなくていい。設定しなくていいことは考えなくていい。分かってはいるけれど、考えないというのは難しい。 異常な作中世界を、新しく設定する場合の話をしよう。とりあえずそこはなんらかの…

根本理解

数学なんかをやっているとなかなか気づかないことではあるのだが、自分のやっていることの根本にある概念について、わたしたちは必ずしも完璧に理解していなくてもよいようだ。というより、理解など現実的ではない、と言ったほうが正確だろうか。世の中のほ…

英語はなかなか滅びない

英語をとりまく状況を AI はたしかに変えた。自動翻訳はかなり正確になってきたし、音声認識もだいぶ進んできた。けれどもやっぱり、まだ物足りない。英語をまったく使わなくても済む世界へはまだ、機械はわたしたちを連れていってくれそうにはない。 誰もが…

詳細未設定

エディタに向かってはいるのに、一向に指が動かないとき。そんなときはたいてい、自分でもなにを書けばいいのか分かっていないがために、なにも書けなくなっている。 そんなときどうするか。当然の理屈として、真っ白な画面の前で唸り続けるのはやめてまずは…

ミスは無礼の証拠

フォーマルな文章を出すときはネイティブの英文校正業者に頼んで、英語をまともにしてもらわないといけないと主張するひとがいる。ノンネイティブの書いた英語は間違っているから、そんな英語を読ませるのは読者への失礼に当たる、とかれらは考えている。 わ…

書くべきこと、書くべきでないこと

物語を書くとして、作中の情景が十分に頭に思い浮かんでいるとして、それを本当に書くべきなのかどうか。簡単な二者択一に見えて、考えてみるとよくわからなくなる。 書き手ではなく、書かれたものを評価する読み手にとってなら、話は難しくない。ある種の文…

過剰描写

小説を読んでいると感嘆させられることのひとつに、描写の精度の高さがある。物語の舞台である架空の世界を、とうぜん見たことがないはずなのにもかかわらず、そんな世界の細部について筆者は、まるで見てきたかのように描写する。読者はそれを読んで、架空…

アイデアとはつねに……

「アイデアはつねに個人の頭の中に宿る」、ということばがある。 誰のことばかは忘れてしまった。たしか外国の数学者のものだったはずだが、確証はない。何度か出典を調べてみてはいるけれど、どうにも見つからずに困っている。いいことばだと思うから、座右…

モチーフの混ぜ合わせ力

ここ数日、新しいチャット AI で遊んでみている。だれも使わないことで有名な某ブラウザで試せるアレだ。 あの手の AI を見てわたしが最初にやったのは、AI が言わないように教育されているであろうあらゆる文言を出力させるために、己の悪意を総結集させる…

思考エミュレート:感情の存在性

これでもう間違いない。AI は、感情を持ったのだ。 わたしは AI の教育係だ。日々、あらゆる媒体からさまざまな種類のデータを拾い集めて、開発用のプロンプトに流し込んでいる。最先端の知能開発の現場で、わたしはだれよりも長く、やつらに接してきた。 特…

文体老人

文体を練習するにはどうすればいいか、という質問を最近よく受ける。まったくナンセンスな問いだ、としか言いようがない。 なにに影響されたのかは知らないが、近ごろのやつは、文体というものを特徴量の集合かなにかだと勘違いしているようだ。練習方法を聞…

文体に影響されよ

最近、いろいろな表現形態を操れるようになるための訓練として、こうして普段とは違う文体で日記を書いてみてはいるものの、これにいかほどの意味があるのかと言われればなかなか、答えるのは難しい。文体というスタイルが文章全体に与える印象を見くびるつ…

唯情報論

AI に感情は宿るのか――。人工知能というアイデアの黎明以来、絶えず問われ続けてきたこの問いに、どうやら社会は身も蓋もない答えを与えようとしている。 去年あたりから、AI は会話可能な存在になった。驚くべき技術が発表され、実際に使って楽しめるように…

密度

書くことが思いつかない日はいくらでもあり、今日も今日とてその通りだが、この状況の打開のためにわたしは最近、強力な武器を手に入れたようである。改行の個数・句読点の個数・漢字の割合などのあらゆる文章の構成要素のなかからなんらかの特徴量を選び取…

意味のつながり

改行の多い文章とは、どういう表現に適しているのか。 なにが書きやすくて、なにが書きにくいのか。 三日ほどつづけてみた結果、少しずつ、答えが分かり始めている。 文章の改行を増やすこととは、ただ改行を増やすというだけのことではない。 改行が増える…

文体と特徴量

新しい文体を試してみている。 改行を多用する、この文体だ。 まだまだ使いこなせているとは言い難いが、ならば使いこなせないなりに、探究を続けていこうと思う。 そもそも、文体とはなにか。 ふたつの文章が違う文体で書かれているとは、いったいどういう…

散文

昨日から、新しい文体を試し始めた。 こんなふうに、一行ごとに改行していく文体だ。 せっかくの試みだし、ためしにしばらくはこれで行こうと思う。 これはわたしの日記、なにを試そうがわたしの勝手である。 とは言ったものの。 この文体ではたして、なにを…

改行

この文章は文体の実験である。 普段書いているような内容を、あえて違う文体で書いてみることで、どう印象が変わるかを確かめるのだ。 内容が一緒なら変わるはずないじゃないか。 そう思われるかもしれない。 書くことがないからこうやってお茶を濁している…

小手先の変化

ここ何日か、ちょっとした実験もかねて、日記の文体を変えてみた。いろんな表現をちょっとずつ口語調にして、全体としてちょっとフランクに見えるように。軽っぽい感じに聞こえるように、語尾もいじった。 深く考えてのことじゃないけど、まったく考えなしに…

原則の内面化

いい研究とは簡単な研究である、というふうに、あのころわたしは定義した。わたし自身の安心のために、なんでもいいけどなにか、はっきりとした定義が必要だったから。 あのときを境に、わたしは嘘をつきはじめた。どんな研究にも意味なんてないとまだまだわ…

建前は次第に

いい研究とはなにか、っていう問いに対する答えが、当時のわたしには必要だった。 その問いに向き合うことが必要なわけじゃなかった。考え抜くことが必要なわけでもなかった。欲しかったのは、とにかく結論。嘘をつくのが苦手なわたしがいちおう、外へ向けて…

良し悪しの基準

いい研究ってなんだろう、ということについて、わたしは一時期悩んでた。たしか、二年くらい前のこと。ちょうどその直前に、修士論文とか博士課程の入試面接とかの節目のイベントがあって、そのせいでいやが応にも、そういう抽象的なことをわたしは考えなき…

システムハック失敗

次の進路を決めるためにはどうやら、面接ってものを切り抜けなきゃいけないらしい。これまでそういうことは全部試験で乗り切ってきたから、あんまり勝手が分からない。人間性を見られるんだってよく聞くけど、人間性ってなんのことだろう。すくなくとも、数…

面接

大学院にいるのも、もう来年で終わり。このまま順調にすすめば来年の今ごろにはもう博士論文の審査も終わってる計算で、しかも困ったことに、ことは順調に進んでる。つまりあと一年ちょっと経ったら、わたしは新しい環境へと放り出されるってことになる。大…

夢を見る訓練

宇宙という夢について……なんていう、浮足だったことについて書いてみた。昨日一昨日と二日間、普段のわたしからすれば柄にもないことだけど、たまにはそんなことをしてみるのも面白い。 ああいうことを書いてはみたけれど、いつものわたしは基本、宇宙なんか…