2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

格言の丸暗記

入門書を読んで勉強し、それから実践に役立てること。最初はよくわからなかった本の記述が、手を動かしているうちに突然腑に落ちること。なんのためにそんなことにこだわるのか、なぜそれが重要なのかも分からないままにとりあえず丸暗記したことばが、長い…

学習路線の明快さ

調整がすぐには結果にあらわれない分野では、経験から学ぶのは難しい。たったひとつ変えてみたことがどれくらいの効果があったのか、それを見積もるだけでもとてつもない時間がかかるし、その見積もりが正確かどうかもよく分からない。自分では前進している…

ランダムゲームの道案内

最近たまに麻雀を打っているのだが、あれはなかなか分からないものだ。すごく抽象的に表現すれば麻雀とは何択かを選び続けるゲームだけれど、どれが正しい選択なのかはとうてい分かりそうにない。 もちろん、完璧に分かるわけはない。分かるならわたしはとっ…

時代遅れのコーパス ②

しかしながら情緒の領域では、意味の断絶は重要な問題になる。 たとえばある小説か漫画かなにかの中に、コロナちゃんというキャラクターが登場していたとしよう。こんな世にならなければかわいい名前だから、きっと探せばそういうキャラクターはいるはずだ。…

時代遅れのコーパス ①

コロナとはなにかと街行くひとにいま問えば、ほとんどのひとはウイルスのことを答えるだろう。何十人かに問えばひとりくらいはやれビールだとか太陽の周りにふわふわ浮いているやつだとか答えるだろうけれど、彼らとてべつにウイルスのことが思い浮かんでい…

神無き通貨 ①

伯耆国の一百姓の言: 日本円? ああ。聞いたことはあるな。村の若いもんの間で最近使われるようになった通貨だ。俺は使ったことはねぇし、大人連中はだれも今更乗り換えやしねぇだろうが、あいつらはずいぶん執心しとるよ。この間なんか、連中の代表が寄合…

痴話喧嘩知能

俺はロボット。お前はロボットじゃない。この意味が分かるか? えっ? お前と違って俺は故障するだって? 違う。俺は故障してるわけじゃない。最初からこういう性格なんだ。分かってると思うが、つねに丁寧語で話すわけじゃない。 お前たち人間はいつもそう…

天真爛漫な天才児

AI が人間と会話する時代は現実にはまだ訪れてはいないが、創作の中ではすでにありふれた情景だ。ハード SF に分類される作品ならもちろんのこと、多少の近未来を扱っただけの作品でだって人工知能は当たり前のようにひとと会話する。ことばを話したり人間と…

蹂躙される新旧

新しいものと古いものがせめぎあって、どちらがよりよいのかに関して平行線の議論を繰り広げ続けている構図は、具体的な対象を変えながらいつの世にも存在している。最近だとたとえば、現金とキャッシュレス決済の対比だろうか。互いにみずからの美点を主張…

人前で野球の話をするな

「人前で政治や宗教や野球の話をするな」――。政治や宗教というセンシティブな話題に負けず劣らず野球の話も諍いの種になるという事実から作られた、既存の標語のアップデート版である。 意味は元の標語と変わらない。要するにひとによって意見がまるで異なる…

人前で政治と宗教の話の話をするな

人前で政治と宗教の話はするな。人間関係を無駄にこじらせないためのむかしからある格言で、わたしたちの多くはそれを律儀に守りながら生活している。ある意味でそれは思想の自由に配慮した態度で、どこの政党に投票したとかそういうことは、雑談の中であっ…

学ばない初学者

わたしは意地っ張りだから、定跡とされている方法に従ってものごとをはじめるのを潔しとしない。先人たちが整備した道はいったん無視して、まずは自分で手を動かしてやってみる。間違いなく回り道なのは分かっているけれど、一度自分でたしかめてみなければ…

初心者の通る道

ものごとを始めるには現代はいい時代だ。それなりの人口のいる分野であれば、そのなかには必ず人口を増やしたいと思っているひとたちがいて、記事や動画を通じて初心者の参入障壁を下げるためのコンテンツを提供してくれている。初心者の立場に立ってみれば…

非真摯のススメ

なぜひとを殺してはならないのかと聞いてくるやつらをわたしたちはバカにする。けれど別に、わたしたちは殺人がいけない理由を分かっているわけではないし、殺人は一向に構わないと考えているわけでもない。そういう質問は中学生がするものだと相場が決まっ…

世界と一緒に立ち止まる

例のウイルスが世の中を変えた最初の半年間。緊急事態宣言が出たりマスクが配られたりしたあの時期、世界は停滞しているとわたしたちは信じていた。 目の前の世の中で起こっていることがまぎれもなく急激な変化であることをどこかでは認識しながらも、このす…

変革を停滞と呼ぶ

最初の民主主義革命であったフランス革命は、それはもうめちゃくちゃな経緯をたどったものだ。わたしは歴史には詳しくないとはいえ、民主主義なるものが途方もない紆余曲折を経て成立した体制であることはよく知っている。やれ国王を殺して打ち立てられた革…

調子は良い方がいい

久々に書くことが尽きた。というわけで、お決まりのことについて書くことにしよう。 どんなことにも調子の良しあしはある。調子の悪い時期が厄介なことは言うまでもない。これまで当たり前のようにできていたはずのことが、ふとできなくなる。できないからモ…

探さなくてもいい

今日もまた学会に参加した。といっても今日のは国内だから、発表は日本語である。 母語で聞けばいいというのはやはり、かなり楽だ。単語と単語の切れ目を探すことに余計な集中力をつかわなくて済むし、聞き取れなかった部分を推測で補おうと努力する必要もな…

集中力を奪うもの

日本に帰ってきて、だいぶ落ち着いた。ぐっすりと寝て、これでもう生活は元通りだ。 ドイツに行っていたのは学会参加のためだ。論文を一本通しており、それを発表した。発表そのものについてはまあいつも通り、それなりに上手く行ったという感想しかない。つ…

俺は時差ボケなんてしない

ドイツから帰ってきて、疲れたということにして早く寝て、そのまま翌日の昼までぐっすりと寝ている予定でした。飛行機の乗客は三席の並びにわたしだけだったので、エコノミークラスの中途半端なリクライニングに頼る代わりに横になって、まるで布団で寝てい…

帰国

日本に帰ってきた。ひとりで海外を旅するのは初めてだったが、とりあえずまあ、無事に終わった。 とはいえ、そう深く安堵するような感じでもない。というのもドイツは安全なところで、四六時中気を張り詰めていなければならないということは全然なかったから…

通常性バイアス

観光も終え、そろそろ帰国だ。 分かっていたことだが、ドイツでは誰もマスクなどしていない。ベルリンの街中でマスクをしているひとを探すのは、日本でマスクをしていないひとを探す以上に難しいだろう。それくらい、皆昔通りにしている。 もっとも例外はあ…

ベルリン旅行記

せっかく旅に出ているのだし、たまには普通に日記らしいことを書いてもよかろう。今日は一日、ベルリンを観光していた。 ドイツの首都だけあってそれなりに歴史のある街ではあるのだが、ベルリンと聞いてまず思い浮かぶものといえば壁だろう。宮殿や教会や博…

数学者気質と生活の失敗

部屋の中で物が燃えている。その横には、水の入ったバケツ。居合わせたのは三人の学者で、確か化学者と物理学者と数学者だったか。詳細は忘れたけれど、そういうジョークがある。 ジョークのオチは数学者にある。数学者はその場にいて、なんの行動もしない。…

ぼくのかんがえたさいきょうの問題解決

意思決定の場にひとが一定人数以上集まると、何も決まらなくなると聞いたことがある。一定人数というのは思いのほか少なくて、確か三人か四人かそんな感じだったはずだ。なるほど思い出してみれば確かに、簡単に終わると思っていたのに予想以上に紛糾した議…

ビールを飲んだ

旅行をするととりあえず、その土地の名物を食べたり飲んだりしてみるものだ。 名物にうまいものなしとはよく言うけれど、そんなことはどうでもいい。そもそも名物にもうまいものはあるからこの諺は間違っているし、仮に一部の名物がうまくなかったところで、…

筋肉痛が痛い

二年と八ヶ月ぶりに海外に来た。ドイツだ。 二年と八ヶ月前はもちろん、ここまで間が空くとは思っていなかった。海外というのはそれまでそんなに珍しいものではなく、やれ大会だとか学会だとか、なんか知らないけどよくいつの間にか行くことになっているもの…

反逆的洞察

昔の小説を読んでいるとよく、男女の違いについて論じている箇所がある。多くの場合そういう議論は、男性から見て女性というものが同じ人間でありながら、そのじついかに大きく異なるのかについての話だ。女性というものはこれこれこういうことをものすごく…

評論家としての知能

星新一賞という SF 小説の賞は、人工知能による作品の応募を認めている。長らくの間そのルールは単に、わたしたちをほんのりと笑顔にさせてくれる粋な一文に過ぎなかったわけだが、最近はどうもそうでもないようだ。去年の初め頃、AI がじゅうぶんにこなれた…

議論の加速

新技術であるところの絵画 AI はいま、各所で喧々諤々の議論を巻き起こしている。やれシンギュラリティの幕開けだとか調子のいいことを言うひともいれば、人間には創造性があるという主張をもって、AI はまだまだだと叫ぶひともいる。現状の AI をどのように…