2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ある講義の記憶

昨日の続きを書くためにいろいろと考えていたら、ふと、大学一年生のときに受けていた講義のことを思い出した。せっかくなので、軽く触れてみることにしよう。 講義の主題は、ナチス期のドイツについてだった。当時の特殊な世の中をひとがどう生きたかという…

論理の万能性

論理的な判断とはよい判断だ、と世間ではよく言われる。直感だけで行動するひとと比べて、すべての行動に理由があるひとは将来的にはるかに大きな報酬を得られる、とひとはみな信じている。論理性への信仰とも呼べる社会現象だ。 だがそれは、はたしてどれく…

論理的判断とは

論理的であることはすばらしいことだと、わたしたちは教わって生きてきた。 知っての通り、こういう文脈で「論理的」とは「感情だけでものごとを判断しない」という意味だ。感情的な選択というのは厄介なもので、直後だけは心地よいかもしれないが、いずれ巨…

自分が正しいと思ってそう

だれでも思想を発信できるこの時代、だれもに炎上の可能性がある。大衆を逆なでするような思想の持ち主がみずからの思想を開陳したとき、運が悪ければ、そのひとは身の丈に合わない、とんでもない量の非難を受けることになる。 炎上にはさまざまなかたちがあ…

相対化のパラドックス

ひとの意見はさまざまだから、世の中にはさまざまな活動がある。そしてせっかく活動をするなら歴史の正しい側でありたい、というのは、世の慈善家たちが共通して持つ願いであるだろう。 だが。歴史の正しい側ということばが使われるのは、その手の純粋な善の…

歴史の正しい側に立つ

歴史とは為政者によってつくられてきたものだ、という事実は、歴史を学ぶ上で最初に注意されることのひとつだろう。 だから歴史は割り引いて解釈せねばならない、と、初学者向けの注意は続く。為政者はありとあらゆる手段で、歴史を都合よく書き換えるからだ…

価値観のアップデート ②

価値観のアップデート、とは最近よく聞かれる表現だ。 原義では、アップデートとはソフトウェアなどを最新の状態にすることだ。最新のバージョンには最新の機能が含まれていて、新しくできるようになった操作があったり、既存の脆弱性が潰れていたりする。そ…

価値観のアップデート ①

価値観のアップデート、という表現が、近ごろよく聞かれるようになった。 アップデート。ソフトウェア用語で、辞書的な意味では、プログラムなどを最新の状態に更新することだ。だからおそらく、価値観をアップデートするとは、最先端の価値判断基準に自分を…

「生娘をシャブ漬け」はどう「面白い」のか ④

では。「生娘をシャブ漬け」と聞いて、笑うひとと笑わないひとの違いとはなんだろう。最後にこんな話題を提供して、この話を締めることにしよう。 これまで述べてきた通り、「ヤバさ」はある種の笑いと表裏一体だ。あるひとにとって「ヤバい」、もっと言えば…

「生娘をシャブ漬け」はどう「面白い」のか ③

そして。インパクトの強さは、面白さと密接に関係しているように思われる。 過激、背徳、不謹慎。全部ひっくるめて、「ヤバさ」。これらはすべて、笑いを増幅させる引き立て役だ。だれかの死だとか、差別だとか、あるいは現実の圧政とか。アネクドートに代表…

「生娘をシャブ漬け」はどう「面白いのか」 ②

一旦、発言の文字通りの意味から離れてみよう。 発言主が伝えたかったことはなにか。それを知るためには一度、表面的な表現を捨象してやる必要がある。「生娘」「シャブ漬け」といった表現、「ヤバい」ことば。だがそれらは、学生に戦略を伝えるための包装紙…

「生娘をシャブ漬け」はどう「面白い」のか ①

とある発言が、世の中を賑わせている。 その発言は、とある大学の社会人向け講座の中で飛び出した。企業のマーケティング戦略を教えるための講座で、報道によればさまざまな企業の担当者が、入れ替わりで講義をする形式らしい。その、記念すべき初回。とある…

サービス精神

文章を書く目的にはいろいろある。 これは日記だから、目的とはありのままの日々を記録することにある。記録して、消滅を免れさせてやるためにある。今日という日にたとえ、振り返るだけの価値がなかったとしても。 記録しなければ、数日後にはすっかり忘れ…

クリエイターとはなにか

世の中には二種類の人間がいる。創造するひとと、しないひとだ。 創造するひと。英語で言えば、クリエイター。もともとの動詞はクリエイトで、「~するひと」という接尾辞がついてクリエイター。すなわちそのまま、創造するひとだ。 動詞のクリエイトは、多…

成功の矮小さ

光が、見える。彼方より差し込む、白色の曙光が。 長い道のり。背後に続く道に光はなく、埃と汚物の悪臭が澱んでいる。どこへゆくのかも定かではなく、いつ夜が明けるのかも定かではなく、それでも歩み続ける以外に道はない。すべてを諦めて闇に消えたくても…

振り返り:批判的態度

なにかを続けること、そのための方法とはなにか。 一番に挙げられる答えは、意志の力だろう。辞めたいと思ったときに、辞めないだけの意志。続けることに伴う様々な困難を、気まぐれを、すべて乗り越えるための強靭な意志。なによりも、己に打ち克つための意…

振り返り:胸を張ること

しばらく脱線していたが、振り返りに戻ることにしよう。 この日記それ自身、というテーマを、わたしはさんざん使ってきた。 日記を書くこともまたわたしの生活の一部なのだから、当然の選定だろう。毎日一時間を日記に費すとして、生活の二十四分の一を、わ…

尊い子供と天邪鬼

住宅街のまんなかの、午後の公園を想像してほしい。 公園はさして広くはない。遊具にも大したものはなく、せいぜい古典的なすべり台とぶらんこが、貧相なアスレチックもどきでつながっているくらいだ。人工物以外にも取り立てて見どころはなく、どこにでもあ…

練習する理由

練習は報われるとは限らない。勝負の瞬間において、それまでの過程は無意味だ。目標のために流した汗は、賭けた金は、なげうった時間は、成功をなんら約束してくれはしない。 報われるべきなのかも疑わしい。なにをもって報われたとするのかすら、本当のとこ…

継続は力なり、と誰かが言った

継続は力なり、と誰かが言った。なんの力なのかは、曖昧なままに。 継続。長きにわたって続けること。わたしたちの多くには、なにかしらを続けた経験があるだろう。自分は違うと思ったとしても、いまいちど考え直してほしい。高尚低俗の別を問わなければ、き…

振り返り:健全な文章執筆

書くという行為の、もっとも健全な姿はなんだろう。 書くことの目的には色々ある。もっとも普遍的には、ここにいない誰かに話を伝えること。発した先から消えてしまうことばも、紙に書いて置いておけば、ほかの誰かが読むことができる。古典的な意思伝達手段…

振り返り:日記とは

一年前のわたしは、いったいなにを書きたかったのか。昨日まではその視点から、この一年間を振り返ってきた。まだまだ振り返り足りないが、いつまでも続けるわけにもいかない。というわけで今日は、ひとつ別の視点から日記を眺めてみることにしよう。 ひとつ…

振り返り:脳の容積

書くこと。あるいはより一般には、表現すること。 すべての生物のなかで、そんなことをするのは人間だけだ。 表現こそ、人間が人間である理由だ。表現する方法があるからこそ、ひとは他の個体になにかを伝えられる。表現するからこそ、ひとは自分の考えを客…

振り返り:研究の建前

日記をはじめたわたしが一番書きたかったことのひとつは、研究という行為の意義についてだった。 ご存知の通り、わたしは博士課程の学生だ。世界の未来を担う研究者の卵として、日夜研究に励んでいる……ことになっている。人類史に燦然と輝く金字塔を打ち立て…

振り返り:満足すること

こんばんは。今日も振り返りの時間です。 この日記が生まれたのは、一年と少しまえの出来事です。まだ肌寒さの残る三月中旬、といってもめったに外出しないわたしには関係のないことですが、とにかくそういうセンチメンタルな時期に、わたしの欲求は限界に達…

振り返り――はじまり

振り返りの時期だと言ったね。 振り返ると言っても、一年ってのは長い期間だ。色々なことが起こる。だから振り返るとして、振り返るべきものは何かってのはそれなりに重要な問題だ。 こういう考え方もできる。テーマを探すことじたいが、すでに振り返りの本…

振り返りの時期

驚くべきことに、この日記をはじめてからもう一年以上が経っているらしい。 一年、ってのはなかなかの期間だ。ひとは一年にひとつ、歳を取る。例外はない。つまりこの一年の間に、世界中の全員が一度は誕生日を迎えたってことだ。ハッピーなことじゃないか。…

継続は可能なり

どうやらこの日記も、はじめて一年が経過したようだ。 わたしがこれほどの期間、一日の休みもなく更新し続けられる人間だとは思わなかった……のはもう、過去の話だ。幾度もの振り返りを通じて、そういう文言はもうキーボードの刻印が擦り切れるほど打ち込んで…

進級を、シームレスに

昨日付けでわたしは、博士課程二年生という身分になったようだ。 当然、実感はわかない。実感とはすべからく、変わりたての頃には湧かないものだからだ。自分が博士二年生であることをわたしは知識として知っているが、例えば「二年生の人は手を挙げてくださ…

嘘の祭典

……とりあえず、その手に持っている銃は置いてほしい。 ……期待した目で見るのもやめてほしい。無言で訴えかけるのはやめてほしい。とりあえず視線をそらして、口を開いてくれ。話す内容は問わない。なんでもいいからとにかくその目をやめて、沈黙という不毛な…