2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

差し挟むボケ

ネタもないので、最近の日記の感想でも書こうと思う。全国 0 人のわたしのファンの皆さんはもれなく、最近のわたしの文章がギャグによっていることに気づいているだろう。0 人なら、まあそりゃそうだな。ほらそこ、寒いとか言わないの。 もちろん、この傾向…

ウミガメの出汁の取り方は、どの料理本にも載っていない

今日はひとつ、ウミガメのスープでもやってみよう。問題は次の段落にある。 男はアルバイトのために、アルバイトそのものよりもはるかに疲れる作業を行った。だが、その作業には、給料はびた一文支払われないという。なぜだろうか? イエスかノーかで答えら…

バグれ、我が身体

毎日律儀にわたしの脳内をひけらかしているだけのこの日記だが、たまにはわたしに起こったことを綴ってみても良いだろう。あまりになにもなくて忘れかけていたのだが、どうやらじつは、わたしにも生活があるらしい。 一昨日、久しぶりに電車で外出した。まえ…

Fox Udon

英語が、話せない。 単語が、出てこないのだ。 英語には積年の恨みがあるから、一昨日もしたこの話を、今日も懲りずにぶり返してやることにしよう。 一昨日の話を要約すれば、あまりに基本的な単語は言い換えが効かないから、それが思い浮かばないともうどう…

文章ぜんぶミスだらけ

複雑であればあるほど、ひとに伝えるのは難しい。 わたしは大学院生をしていて、たまに論文を書くわけだが、どう書けばいいのかいつも困っている。論文に書くのは人類がいまだ誰も考えたことのないことだし、残念ながら人類はそこそこ賢いから、そういうもの…

It is so great.

英語が、話せない。 単語が、出てこないのである。 英語のできるひとにそう愚痴ると、たいていこう返ってくる。「簡単なことばで話しなさい」と。 まことにありがたいアドバイスだ。そのありがたさたるや、ただでさえ話の長かった校長先生が、ボケて同じ話し…

わたしは英語がきらいだ

諸君、わたしは英語がきらいだ。 「グローバル化」ということばすら使い古された世の中では、われわれは英語から逃れようがない。スピーク、オア、ダイ。すべてを先延ばしにする最強の呪文、「パードン?」だけを覚えて、われわれ非母語話者は、このファッキ…

まとまらない文章の記録

日記をはじめて四か月ほどになる。正直なところ、わたしにあたらしく日課ができ、これほど長い間つづくことになろうとは思っていなかった。その証拠に、この日記のはじまりには、日記とは三日坊主の代名詞だとつづられている。 考えたことを書きたくてつづけ…

『矛盾三定理系』に関する中間感想

もし、ほかのすべてとおなじように、数学が矛盾していたら。そして、そうみなが知ったまま、それでも世界はふつうにまわるとしたら。そんな世界をふと思いついて、この九日間想像して書いてきた。 想像すると言っても、われわれの世界とこの世界のことなる点…

矛盾三定理系 第九話 『月刊こどものサイエンス』誌 10 月号・科学史コーナー ③

ティルピッツは数学者ですが、物理にもくわしく、レーベルのものとはべつの実験装置を、じぶんでいちから作りました。その装置は、レーベルのものとおなじく、『右公式』ともうひとつの数学の公式のどちらがまちがっているのかをたしかめるものでした。その…

矛盾三定理系 第八話 『月刊こどものサイエンス』誌 10 月号・科学史コーナー ②

ウムラウフの理論はすばらしいものでしたが、そのせいで、彼の論文の一節はおおきな注目をあつめることになりました。かれは、こんなふうに書いていました――「理論の展開にあたって、もうひとつの公式を検討した。しかしその公式は、物理学の手によって、ま…

矛盾三定理系 第七話 『月刊こどものサイエンス』誌 10 月号・科学史コーナー ①

「科学は、矛盾で建てられた楼閣である」――これは、十九世紀のドイツの物理学者、カール・レーベルが、彼の著書の中にのこしたことばです。科学とはぜんぜんつじつまがあわないものだ、という意味のこのことばは、いまでも世界中の科学者たちにつかわれてい…

矛盾三定理系 第六話

|<前へ| |>次へ| 23. 回答者: HexWizz223 (20XY/8/22 00:12) > へるめん 氏、 すくなくとも私は、自分がただしいことを確信していますよ。 24. 回答者: へるめん (20XY/8/22 00:16) > HexWizz223 そう。意味なんて証明できないのに、どうやって? そんなあい…

矛盾三定理系 第五話

|<前へ| |>次へ| 12. 回答者: へるめん (20XY/8/21 23:01) なんかこわいひとに絡まれてるね! ファイト! 13. 回答者: coursemourse (20XY/8/21 23:02) > HexWizz223 さん、 あなたはずいぶんと数学にはお詳しいようですが、大学受験には詳しくないようです…

矛盾三定理系 第四話

【質問】20XX 年度・N 大学入学試験・理系数学第 3 問について 質問者: たねぴー (20XY/8/21 20:56) 20XX 年の N 大学入試の数学の 3 番 (数列極限の問題) について、質問があります。 ぼくは、『定値の定理』と『デルカの極限公式』をつかってこの問題を解…

矛盾三定理系 第三話

----- 査読者 3 -----評価: -2 (不採択) この論文は、どのふたつも矛盾しないが全体としては矛盾する三つの定理を例示している。著者らはこの例をもって、二定理の矛盾のみをもって数学的議論の矛盾を判断することの危険性を主張している。 今後の数学の発展…

矛盾三定理系 第二話

----- 査読者 2 -----評価: 0 (当落線上) この論文では、どの二つもたがいに矛盾しないが、三つを合わせれば矛盾する定理系を扱っている。具体的には、解析幾何学における『クレーベの不動点定理』『アルバの一様定理』『ペトロフスカヤ -- ペトロフスキーの…

矛盾三定理系 第一話

著者 殿、 あなたにこれをお伝えしなければならないことは大変心苦しいのですが、貴論文 『矛盾定理対を含まない矛盾三定理系』 は、国際分野際数学会議 (International Inter-area Mathematical Conference) に不採択の運びとなりました。 どうか落ち込まな…

読書感想文 テッド・チャン『息吹』(余韻)

タイトルの作品はしばらく前に読んだ小説だが、わたしのなかにはいまでもまだその余韻が残っている。それなら、ふたたび感想文を書いてもよいだろう。ネタバレが問題になる作品だとは思わないが、いちおう、空行をはさんでから始める。 科学と宗教が対立する…

計画的退屈

おおくの仕事は、とつぜん、増えたり減ったりする。簡単だと思っていたところがじつは簡単ではなかったり、思わぬ修正が必要になった場合、わたしは、わたしが思っていた以上の労力を費やす羽目になる。逆に、たいへんだと思って身構えていたステップが、ひ…

積まれたルールブック

カードゲームのルールは膨大である。たとえば、『マジック・ザ・ギャザリング』の公式によれば、ルールブックには電話帳のような厚みがあるらしい。おそらくルール上の問題は、あらたなメカニズムが追加されるたびに発生していて、これまでのメカニズムとの…

カオス防衛活動

専門家とは、とかく文句の多い種族である。 「専門家も、専門外のことについては素人である」――このことばは、何にでも口をはさみがちな専門家たちをいましめることばだ。じっさい、ツイッターなど開いてみれば、政治や初等教育に物申したい学者たちが、日陰…

時を超えた熱狂

ものごとをはじめたての頃の熱は、時間をかけるごとにさめてゆく。そして、それが習慣になったころには、熱狂の中ではけっして見えなかったような、無数のちいさな欠点が見えるようになる。だから、おおくの時間をついやした趣味は、かならずしも美しく見え…

プラスアルファ

書かれる前の文章は、いつだって名作だ。エディタの真っ白はいつも、無限の可能性で照らされている。 このテキストエディタにいまから記される文章は、いずれわたしの名を世にしらしめる礎となる。このキーボードでわたしは、文筆家としての確固たる一歩を踏…

ミニチュア版数学史

残念ながらわたしは、書かれたままの数学を書かれたままに理解し、そして運用できる種類の人間ではない。以前に書いたとおり、本や論文に書かれた数学を、わたしは、わたしが考えるためのことば、すなわちイメージに、わざわざ訳してから理解する。 逆に、わ…

わからないのはわたしたちだけ

そう意識しなくても、わたしたちのことばづかいは、わたしたちがふだんやっていることに影響されてしまう。ひとりの博士課程学生として、わたしはふだんから数学をしているから、わたしのことばづかいは多かれ少なかれ数学的だ。 数学的なことばづかいとはな…

キメラの成長日記

われわれが文章を書くとき、われわれは各断片を、これまでに書いた内容と矛盾しないように書く。おなじように、各断片は、これから書かれる予定の内容へと向かえるように書かれる。結果として、文章は、おのおのの部分が複雑に依存しあった構造をとる。 この…

読書感想文 テッド・チャン『息吹』(③)

一昨日と昨日のつづき。今日でおしまいのつもりだ。例によって、空行の下から始める。 『予期される未来』は、自由意志の非存在が、目に見えるかたちでたしかめられる世界を扱っている。この世界は完全に決定的だ。 世界は決定的だという考えじたいは古典的…

読書感想文 テッド・チャン『息吹』(②)

ひきつづき、読書感想文を書く。昨日と同じく、空行の下からはじめる。 『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』では、人工知能が発展し、自我と呼べるほどの高度な意識をもつ世界を扱っている。主人公たちは、ディジエントとよばれる人工知能と、対…

読書感想文 テッド・チャン『息吹』(①)

タイトルの作品を読んだので、感想文を書く。結末をあらかじめ知ることで読書体験が損なわれる種類の作品ではないから、ネタバレの心配はしなくてよいような気もするが、とりあえず機械的に、空行の下から始めることにする。なお、一部短編の感想は明日以降…