2021-08-28から1日間の記事一覧

或る暗殺者の話 ②

ケイカは工業地区へと向かった。都心からそう遠くないにもかかわらず、あたりは閑散として、まるでもう忘れ去られて何十年も経ったような雰囲気だった。工場の巨大な屋根が月を映し、まるで天を押しつぶしたような冷たい影で、不自然に太い道路に覆いかぶさ…

或る暗殺者の話 ①

最後の吐息が川面に消えるのを見て、ケイカは死体から手を離した。川の水で両手を軽くすすいで立ち上がると、街灯が河川敷に長い影を落とした。土手に上がろうとケイカがが歩き出すと、腰まで伸びるまっすぐな金髪が、消えることのない都心の灯りに妖しいき…